「例えばこの木」 08

[ヘリポートでの作業いろいろ その1]
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ヘリポートにまでお邪魔してしまいました。ここから先は別の日に作業する予定だったのが、同日の作業に変更になったとのことで、つい付いて来てしまいました。
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ヘリポートではこの日出材した丸太達が待っていました。大型運搬車がすでに待機しています。そこにレッカー車登場。これがまたカッコいいのです。
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レッカーの操縦をするこの方、これまでに運んだいろいろなものをスマホで見せてくれます。神社に生えてた大きな木の特殊伐採や、お寺の門横の大きな仁王さんなどいづれも巨大で慎重な作業を要するものばかり。きっとこの仕事を誇りに思ってやってるんだなと感じます。
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中井さんが戻ってきて、作業開始です。手に持ってるのはトビという木を手で動かす道具です。
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大きなトラックに大きな丸太がどんどんと積み込まれます。ただ積み込むだけではなく傷をつけないように、安定するしょうに、手際よく積み込みます。
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トラックの運転手さんはトビで吊り上げられた丸太をちょいと捕まえてテトリスのように丸太の隙間に下していきます。何気ない作業のようですが、すごく気をつかっているのがわかります。トビの先は鳥のくちばしのような金物になっていてこれを丸太に引掛けて操るのですが、丸太のごく端っこを適確に捕えるのです。ちゃんと刺さっていないとすっぽ抜けてあぶないですし、無駄にさし過ぎると材が傷物になる。そこのギリギリのところを狙うのです。荷台に納まった瞬間に、丸太からワイヤーをすっと外し、レッカーのフックに掛けなおす。その瞬間にレッカーのアームは中井さんの元へと戻り、次の玉掛のワイヤーがフックに取り付けられる。全てが連動するように無駄のない動きです。3人ともがお互いの次の動きを意識しながら絶妙なタイミングで動いています。この荷積み作業、正直、地味で単調な作業に見えるのですが、ずっと見ていて飽きません。地味に見える作業程とてもかっこいいと思えてしまうのです。
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お昼も持たずにくっついてきた私に、中井さんがおにぎりを届けてくれました。朝からふたつの山を駆け回ってクタクタのはずなのにこんな気遣いまで。おにぎりがおいしすぎて心底恐縮してしまいました。(つづく)

Morizo-内田
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# by morizo-archi | 2016-09-14 08:00 | 「例えばこの木 大黒柱のヘリ出材」 | Comments(0)

「例えばこの木」 07

[帰り道]
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ヘリ出材に使ったワイヤーです。ヘリポートにまでお邪魔して置いてある束を見ました。Lワイヤーの数だけ取材したということですが、たくさん出したなー。これ、ヘリが無かったらどうやって出してたんだろう。って思います。
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この日最後のヘリ出材の木です。3mを3本一気にあげました。
ヘリ出材は事前の準備がいろいろいると書きましたが、ワイヤーの準備もその一つです。事前に出材する木一本一本にくくっておきますが、さすが丈夫なワイヤーだけあって結構重いのです。それを準備段階で持って登ってくくっておくのです。
以前下見に連れて行ってもらった時に、一つ持たせてもらいました。肩が痛く、なかなか歩きにくかったのですが、中井さんはそれを3本も持っていました。なのに手ぶらでもしんどい山道を鼻歌でも歌いそうな身軽さで進んでいたのを、私が必死についていく。山いきさんってほんとすごいなーって思います。

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地下足袋は必需品です。スパイク付です。私もかっこよさと憧れだけで買ってしまいました。
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背中のリュックには何が入っているんでしょうか?身軽に見えますが、ライトやトランシーバー飲み物。作業の長さによってはきっとチェーンソーや燃料、お弁当も持って上がりますよね。
帰り道、少し話を聞かせてもらいました。この仕事で一番難しいのは何ですか?
「なれかなぁ」
???
「仕事がある程度できるようになってきたら、慣れで気が緩むことがある」
「慣れてきたころが危ない」
山いきさんの仕事は常に危険と隣り合わせです。それも大きなけがに繋がることはおおいに考えられる仕事です。山の上で怪我をしたら降りていくだけでも大変なことです。慣れた自分をコントロールするのが難しいということなのでしょうか。意外な答えにハッとし、そしてなるほど。納得しました。(つづく)

Morizo-内田
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# by morizo-archi | 2016-09-13 08:05 | 「例えばこの木 大黒柱のヘリ出材」 | Comments(0)

「例えばこの木」 06


[実家を離れる瞬間]
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宙に浮きました。
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すーぅーーっと吸い上げられて行くようです。
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あっという間に空高く離れていきます。あの木です。大黒柱になる子です。育った山を離れてお嫁に行くのです。
この子はすでに嫁入り先が決まっていますが、普通はこの後お見合いをします。吉野では競市がお見合い会場となります。中井さん達山守はきっと娘を嫁に出すような気分だと想像してしまいます。ひいおじいさんが植えて、おじいさんが幼少期を育て、お父さん、中井さんがこの日まで手塩にかけた。一本一本がいいところに行って、喜ばれ、永く愛されて欲しい。そう願うのは、これまでの時間と育ててきた人の思いを考えると決して大げさな事ではないです。
この日は40往復ヘリを飛ばして、たぶん5、60本は出材したと思いますが、そのどれもに同じことが言えるのです。
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真ん中に横たわっている長い木、途中で切っていますが、根元側の3mの子はお嫁に行けて、それより上の部分はこの場に残るのです。事情があり、お嫁に出してあげれないのです。その事情こそが現在の山の問題。いえ、日本の大問題なのです。
「昔はほうきで掃いたように全部持っていったんやって」西田さんが言います。もっと細い丸太や、枝もです。なぜ今は置いて行ってしまうのでしょうか?
答えは、木材単価が下がってしまったからです。ヘリ出材は人手が少なくて済むというメリットがありますがそれでも機長、西田さん、中井さん、そしてヘリポートで丸太を受け取る職人さん。最低4人です。
その後にもヘリポートから市場の土場まで持っていくのに丸太を整える人、積む人、運ぶ人が必要です。もちろん出材前に、伐る木を選定、伐採、サシ入れ、ワイヤー掛けと、出材だけでいったい何人工必要なのかと思うのです。
人員が少ない分、機材は必要です。ヘリコプター、レッカー、大型トラック、移動車やチェーンソーまで上げるときりがないですが、1つでも欠けるとこの子たちはお見合い会場まで行けないのです。
木は鉄やコンクリートに比べると何とか人の手でも扱える、有り難い素材ですが、それでも丸太は大きく重い。これを「運ぶ」という作業はなかなか重要なポイントなのです。しかも、何十年、何百年、沢山の手間と思いを込めて育てられた木を、お嫁に行く最後の最後で傷物にするわけにはいきません。大切に、丁寧に、見送りたい。かといってここにお金がかかりすぎるとお見合いのハードルが上ってしまい、貰い手がいなくなる恐れがあるのです。このギリギリの線をすれすれでやっている。それが現在の林業の現実です。ゆえに、泣く泣く山に置いて行く子を生んでいるのです。とっても残念でなりません。選ばれしミスユニバースですら全身を連れて出せないのです。
私、今度来てこの子連れて帰ってもいい?
「ええよ。」中井さんにも今はどうすることもできません。
もちろん私が担いで連れて帰ることもできないのです。(つづく)
Morizo-内田
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# by morizo-archi | 2016-09-12 07:00 | 「例えばこの木 大黒柱のヘリ出材」 | Comments(3)

■今日の家づくり_02

今回の「今日の家づくり」はキッチンの衣替えについて
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我が家の食器棚。おそうめんや冷奴が恋しくなるのは6月頃かな?鍋の小鉢や土っぽい食器が引っ込んで、蕎麦チョコや豆腐ざる、硝子の器が登場します。
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冷たいトマトやマリネサラダは器ごと冷凍庫で冷やしてから食卓に。涼しげにして夏感を楽しめるのは器の活躍があってこそ。

まだ暑い日が続いていますが、秋の味覚が恋しい9月。そろそろ器の衣替えをしようかな、いやもう一回おそうめん食べよかな
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夏の名残り惜しさと、秋の食欲とが、限られた食器棚スペースでせめぎ合います。
他にも建具を取り替えたり、マットを取り替えたり、小さな衣替えでも家の空気が変わりますよね。これも立派な家づくりだと思います。

12月には器と雑貨の「さいえ」さんとコラボ展を予定しています。
それまでの間、2人が思う「今日の家づくり」をぼちぼち配信していきます☆


# by morizo-archi | 2016-09-11 01:29 | 今日の家づくり | Comments(0)

「例えばこの木」 05

[淡々と。それがかっこいい。]
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「きゅいんきゅいんきゅいんきゅいん、ル」
まっすぐに近づいてきて真上で旋回することなく止まるのです。
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ライトを点灯して場所を知らせます。が、上空3、40メートルです。ホントにこれが目印になるのでしょうか?
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間髪おかずにロープが下りてきます。
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迷いなく真っ直ぐに降りてくるのです。それもなかなかのスピードで。リモコンで動かしているわけでも、コンピューターで制御しているわけでもないのですが、信じなれない正確さです。この日は35mのロープ。ヘリの位置だけが下すポイントを左右するのです。どんな訓練をしたらこんな神業ができるようになるのでしょうか?
アカギさんのこの技術。「自分の会社のこと褒めるのなんかあれやけど、これはホンマにすごいとおもうゎ」と、ものすごく照れながら西田さんが言いました。ロープの先に筆を持たせたら字が書けるのではと思えるほどだそうです。
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見ました?
・・・・も一度見てみましょう。
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合図しました。
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ロープ降りてきました。
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ワイヤー装着して離れます。

・・・・ね。見ましたよね。西田さんほぼ動いてないでしょ。合図から離れるまで、同じ場所に立ったままです。何度来ても毎回すごい精度なのです。

普通のことのように淡々と流れるように作業を進める西田さんと機長。地上と上空はトランシーバーでわずかに言葉を交わすだけなのです。その距離を埋めるのは信頼できるお互いの技術。ほんとにすごいなーと感動してしまうのです。かっこよすぎて惚れてしまうじゃありませんか。(つづく)
Morizo-内田
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# by morizo-archi | 2016-09-09 07:00 | 「例えばこの木 大黒柱のヘリ出材」 | Comments(0)

「例えばこの木」 04

[ヘリコプターを使うワケ]
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あ、来た。今度こそ。
へたな写真を撮るか、肉眼にしかと納めるか、迷います。
ヘリは姿が見えず音だけが近づいたと思ったら急に現れます。どうしてここがわかるのだろう?
何やら赤い紐がすうぅぅーっと下りてきて、先っちょに大き目のアメフトヘルメットのようなものがくっついています。
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ヘリが見えてから、アメフトヘルメットが地上に下りてくるまで数十秒という感覚です。
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それを西田さんがキャッチして丸太をくくっているワイヤーを装着します。
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と同時に、さっとその場から離れるのです。この一連の作業はとっても円滑で、ごく普通に、流れるように行われているのですが、良く考えるとすごいことな気がします。
事前にどっちに逃げるかは確認しているようですが、その瞬間に丸太は中に舞い上がります。怖くないのかな?ワイヤーが外れてしまうことはないのかな?機長さんは西田さんが見えているのかな?いろんな疑問が沸いてきます。
このヘリ出材は昭和40年代から行われていたそうで、吉野では珍しくない出材方法です。急傾斜の多い地形と密植間伐伐採がこの方法を選ぶ理由になっています。吉野では植林するときに他産地よりもつめつめに植えます。(8千~1万2千本/ha)100m×100mのスペースに1万本。ざっくり言うと畳1枚に2本です。他産地では畳1、2枚に1本程度ゆったり植えてすくすく育てます。吉野では1本当たりのスペースが狭いので太くなるのに年月がかかるのですが、その分年輪が細かく、足元と頭のてっぺんの太さに差の少ないスラーッとしたべっぴんさんが育つのです。元々吉野材は酒樽を作るのに適した材として発展しました。節があってはお酒が漏れてしまうので無節の子を育てることに精を出したのです。
その方法はまたの機会にとしますが、そうして手塩にかけた良材を、望まれたタイミングで一本一本吟味して、お嫁に出すのです。皆伐はしません。みんな伐ると書いて、「かいばつ」と読みます。ひと山全部を一斉に伐るなら、下から順番に出したり、道を作って運んだり、電線のようなワイヤーを設置して下したりできますが、ここではそういった方法をとりません。
もっと育てるいい子を残しながら、今のタイミングでお嫁に行くべき子を選びます。吉野では残す子も、出す子も、傷なく運ぶルートとしてさまざまな理由から空中を選んでいるのです。

なのでこの地域では出材事業がメインのヘリコプター会社が成り立っていたのです。ヘリ出材を初めて知った10年前はそんな理由など知る由もなく、ただ「すごい!」、「カッコいい!」と反応してしまっていたのです。(つづく)
Morizo-内田

# by morizo-archi | 2016-09-08 08:00 | 「例えばこの木 大黒柱のヘリ出材」 | Comments(0)

建築設計室Morizo- 設計士の目線で暮らしや空間のあれこれを発信します。


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