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カテゴリ:欧州調査レポート(日本比較含む)( 12 )

日独「木材産業・木造建築」シンポジウム03

NRW州木材センター
Zentrum Holz
https://www.wald-und-holz.nrw.de/


【導入講演:ドイツ及びNRWの林業の概要】
(MULNV省造林・森林気候変動・木材産業課)
ヨーステンさんの説明が始まる。
現在は自然に近い林業を目指し、市民の憩いの場となる森林には基本的に誰でも入れる。
とのこと。やっぱり想像通り。と思いきや、
自然林にはブナ、オークなど広葉樹が多けどドイツ全体の森林には針葉樹が多い
と、ドイツ林業のイメージと違った説明が続く。
植林による針葉樹の伐期は60~100年で価格的にも評価が高く収入的には有利。
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40年生~80年生の針葉樹ストックが最も多くこの辺りも含めて、戦後の拡大造林の伐期を迎える日本の杉桧の状況に似ている。
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ただ、日本と違うと感じたのは森林木材産業がドイツ全体で600憶(€?)の価値があるとしている。と、社会的な評価が高いということ。
NRW州は森林面積も多く家具などの木工産業が昔から盛んだったことや、現在は経済都市で出版社が多く紙による木材活用が多いらしい。
州では木材産業PR活動によって林業、木材加工、建築、紙関係などで70%雇用UPに貢献したとのこと。
温暖化対策や環境配慮への意識からドイツ木造2.0計画「ProHolz」 http://www.proholz.at/ の取り組みがドイツ中に広まっている。
という報告はうらやましい限り。

【導入講演:日本の森林・林業・木材産業の概要】
(農林水産省林野庁林政部)
概要説明がとてもわかりやすく現在の日本の林業の問題が改めて見えた。
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国土面積に大差ない日独だけど、ドイツの森林面積は国土の32%、対して日本は78%と倍。そのうちの44%が杉。
現在52憶㎥のストックがあり、毎年7千万㎥成長により増えている。
1970年頃まで植林が盛んに行われ伐期を迎えた木は50%にもなっているという。
でももしこれを切ったら、又植えるのかな?誰か施業するのかな?大きな疑問が湧く。
10ha以下の森林所有者が大半で、林業従事者は12万人から現在4万人になっているらしく
これが何より大きな問題と思う。
ドイツと圧倒的に違うのは急傾斜地が多く林道整備が行き届いていないため輸送費にコストがかかりすぎて森林所有者の利益が出ない点。
木材単価が下がった今では到底、育林や後継者育成まですることができないのが現状。
国は対策として機械化を進め重機と架線で輸送コストを下げる援助をするとのこと。
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一時期木材自給率が2割以下にまで下がった時期から今は36%にまで回復してるらしい。
でもこの多くはバイオマスなどの増加によるものらしいので一概には喜べない。
戦後大半の木材利用は住宅用材が占めていたが、今後は人口減少に備え住宅以外の用途での利用を促進する必要がある。
現在緩和法改正で12階建てまでの高層木造が可能となったが、イメージ的に浸透するにはまだまだと話された。

改めて聞けば聞くほどやっぱり吉備新日本の林業界。
なんどか改善のきっかけがほしい。




by morizo-archi | 2019-05-17 02:32 | 欧州調査レポート(日本比較含む) | Comments(0)

日独「木材産業・木造建築」シンポジウム02

ヒュッテマン社集成材製造工場見学
Leimbinderwerk Hüttemann
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70haの敷地に沢山の塔屋が立ち並ぶ大きな集成材工場。
家族経営から始まった小さな工場は1970年にこの地に来て集成材を生産、近年オーストリアに本社を持つ8つのグループ会社からなる大企業に買収され生産量を伸ばしている。今では設備や塔屋も増え6万㎥の生産をする。
常時6千㎥のラミナを在庫し桟積み乾燥している。急ぎの注文時には乾燥済みのラミナを仕入れることもあり、
Maxこの倍の量が保管できるスペースを整備しているとのこと。
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広大な敷地にすごい量の材が置かれている。
乾燥機は5台。6万㎥の量がさばけるらしい。

乾燥したラミナはゴールドアイというマシーンで強度や乾燥節、割れや節まで四面同時に視覚的なところまで様々なチェックをする。
データーが取られ、高度や見た目の劣る部分はカットされOKとなった部分のみがラインを進んでいく。
進む材にも強度によってマークがされ、外部のより強度が必要な部分にはマークが入ったラミナ、そうでないところにはマークの無いラミナがオートマチックに配置され接着剤塗布、プレス、検査、結束と工場内を流れていく。
意外と人が作業をしているなと思ったけど、製品制度は厳格に守られているとのこと。
このゴールドアイは品質管理が厳しくプログラミングされていて、
これを操作して生産者が精度を調整することは絶対にできないんですよと案内役の設計部長さんが言っている。

NRW州はドイツ三位の経済都のデュッセルドルフを含む産業の活発なエリア。
環境意識や木材利用への観点から木造建築が増え出荷量も増えているらしい。
精度の高い集成材により大規模建築にも採用されることも増え、最長56mの巨大な製品から湾曲製品、手加工製品までラインナップも多い。
そんな巨大な製品がここへ来るまでに通ったあの路を使って輸送できるのか?と質問がでる。
見学者からのその質問は毎度のことのようで、部長さんは50年前からずっとここで生産をしていますからね。と。

幅160~360、成800、長さ3m ベーシックに作っているサイズが既に大きい。
ラミナの樹種はFichteが85%、Lärcheが15%
含水率は26~28を11~12%まで乾燥させ、乾燥のエネルギーは残材を利用して自社生産。
原材料の産地はヨーロッパを中心にスカンジナビアやロシアからも仕入れているが
今年は倒木被害の材が多く地域産材率が高い。
キクイムシは木の周囲しか食べないから集成材には全く影響がないらしい。

集成材生産工程は撮影禁止で必死にメモを取る。
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最後の工程、ロープで一つ一つ吊り上げ検査をしている塔屋で特別にと撮影OKが出た。
材の端にいる人が小さく見える。
巨大な材が持ち上がると流石にかなりになる。
これに仕口加工や金物取付までを完璧に工場で行うことで現場作業は4人体制で出来るらしい。
徹底的に合理的な建築計画。流石ドイツだと思った。

それにしてもシンポジウム初日の朝からものすごい情報量。
イヤホンから同時通訳の日本語説明がありがたいけどすでに頭がいっぱい。

by morizo-archi | 2019-05-16 22:28 | 欧州調査レポート(日本比較含む) | Comments(0)

日独「木材産業・木造建築」シンポジウム01

空港に豪華なバスで迎えに来ていただきオルツベルクに向かう。
道中の森林で去年被害にあった森林の説明を受ける。
2018年は記録的なほど雨が降らず、キクイムシが大発生し木が弱っているところに11月の嵐で沢山の倒木が出た。
今、立ち枯れた木や倒木の整理をしているところとのこと。


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確かにあちこちに伐採搬出された後の空き地やまだ処理待ちの倒木がある。
倒れていなくてもキクイムシの被害が大きく立ち枯れてる木も目に付く。
被害にあった木は根元から倒れた木は材木として問題なく使えるものが多く、
キクイムシも外皮まわりしか食べないので製材して使うとのこと。
そうでないものはバイオマスなどに使うらしい。
【雨不足の影響】キクイムシ一般的に森林には居る昆虫。通常は弱った木につく。
木が弱る程の2018年の雨不足がいかに深刻だったか。
ベルリンでも噂に聞いてたマイナス20℃といったような寒さはここ数年なく、
私が体験した2018の冬はかなり暖冬だったようで、ほとんどの日を日本と変わらない感覚で過ごせた。

樹種は大半がFichte(唐桧)
その他はKiefer(松)、Eiche(楢)Lärche(唐松)などが少し。
Fichteはこの地域で200年前から植林されてきた樹種だけど本当はもっと緯度の高い地域に生息する樹らしく、
現在の急速な温暖化傾向にあっては少し厄介な樹となる可能性有?
まるで日本の杉のようで、Fichteがちょっと可哀そうに思えた。
今後はこのような異常気象に備えて混合林を目指すとヨーステンさんの解説。
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クリスマスツリーの生産エリアもたくさん見た。
NRW州はドイツトップの生産量を誇る。これは確かやっぱり樅って言ったかな?
日本では想像しにくい一般家庭に毎年ツリーの生木を用意する文化があってびっくりした。
林業と言っていいのか否かわからないけど、木にしては短期に収穫が可能な畑のような光景。
枝だけを飾り用に使うために北山杉の様にてっぺんしか枝が残っていない背の高い樹もあったりなかなか面白い。
ツリーを毎年使い捨ててるのかどうかわからないけど、もし使い捨てても樹なので循環可能だし、
若木の炭素吸収率の高さを考えるとプラス面もあるかも。と思ったり。
日本でも皆さんクリスマスは楽しむけれど、この産業は日本ではまだまだまねできないと思った。


by morizo-archi | 2019-05-16 22:04 | 欧州調査レポート(日本比較含む) | Comments(0)

濃厚な三日間

「木材産業・木造建築」日独シンポジウム (ダイジェスト)

濃厚な三日間だった。

NRW州の環境省の方の温かい歓迎を受けて始まったシンポジウム前夜の食事会。
日本大使館の方と林野庁の方や木造研究の先生と合流し、緊張の中早くもいろいろな興味深い話を聞く。
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翌シンポジウム初日は集成材工場の解説・見学から始まり、
木材センターでの講演や報告、ディスカッションと軽食コーヒーブレイクを挟みながら分刻みにスケジュールが進む。
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私は初日最後の発表だったから1日中緊張が続いてた。
「木造建築:日本の現状と日独の共通する課題」というテーマで30分。
想像以上の緊張で言葉が詰まる。同時通訳の方に事前に資料を渡していたのに準備していたことの半分も話せなかったかも。少し心残り。

初日会議後の公式夕食会には市長さんや日本の総領事さん達も来られて素晴らしい料理のおもてなしを受け、お土産まで頂いた。
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2日目は森林教育センターの見学に始まり、両国の今後の森林管理政策や法律、気候変動に対応する管理計画やバーチャルシミュレーションシステムの活用まで目を丸くしっぱなしの1日だった。

林業という時間のかかる事業であることや、法改正のスピードの遅さ、森林所有者の細分化や意識の遅れなど、
日独共通の課題も多く意見交換できたことがとても有意義だったと両国の団長役を務めた方達が述べられた。

今の日本の林業があまりにも残念なことになっているといつも嘆いてしまうけど、俯瞰で見ると歴史や時代の事情で仕方が無かったのも確か。
団長さんが言ってたように拡大造林で作った資源を今まさに活用できる時期が来たとも言える。(ちょっと遅れ気味だけど)
対応策としての森林税導入の検討等もう何十年も前から始まってたことや、
パリ協定が引き金となって今年施行されることになったこと、
林地の登記や境界確定がそんなにも進んでいないことなど知らなかったことも沢山。
そしてこの状況をまさに今から変えていく。そんなタイミングに立ち会えた気分になった。

2日間で計4カ所の施設見学、12人の発表、5回のディスカッションを重ねて包括的かつ中長期的な視点で意見交換を濃厚に行った。
このみっちりスケジュールと完璧な進行に国際会議の無駄の無さを見た。同時通訳の方の仕事も見事。

私が普段仕事や活動で目にしている範囲がいかに小さいか、世界がどれほど進んでいるかも思い知った。
森林産業の盛んなNRW州ザウアーラント地域。
日本から遠く離れたここでの交流が自国を改めて振り返るきっかけとなることは間違いない感じがしたし、それもシンポジウムを行う大きな意義の一つと思った。

個人的には消化しきれないほどの沢山の情報と国レベルの動きを目の前で見ることができ大興奮の3日間だった。とてもいい機会を頂いた。

私の発表内容は他の方と規模も内容もかなりギャップがあったけど、
ドイツの人たちにとって日本の高い匠の技術やシンプルで機能的なデザインの評価は想像以上に高く、このテーマに自信を持っていいと確信した。
そして自分が日本に何ができるかを考えてもっと研鑽を積もうと強く思うことが出来た。

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一番印象に残ったのはシンポジウム前夜に行った森のレストランのシェフがコンセプトにしているという「環境ディッシュ」という言葉。
すごいインスピレーションを感じてしまった。
昔はルール地方から来る鉱山労働者に向けて食事と宿を提供していた。
それを発展させて地域で取れる旬の素材や肉を美味しく料理して、今ではグルメも来るホテルレストランになったと話があった。

今、目の前にある素材をどう使ってどんな魅力的なものを提案できるか。どう価値を表現して伝えるか。決してデザインが先行したエゴならないように。
この先のMorizo-のコンセプトとして「環境ディッシュな建築」を目指すのはどうかと真剣に考え始めてる。

by morizo-archi | 2019-05-07 07:03 | 欧州調査レポート(日本比較含む) | Comments(0)

アートに触れる

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グッチに誘ってもらって、アート展覧会のオープニングへ。

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ここで活動するKyoco Tamiyama さんという日本人女性はこれまで日本で活動してきた現代アート作家さんで、この春にベルリンに活動の場を移したとのこと。とてもきれいでかっこいい。
この日は制作風景を公開しながら作品展示。

その他にもこの建物の中に選ばれたアーティストがここで暮らしながら一部屋ずつ使って作品制作をしていてこの日はそれを一同に見れる。
いろんな作品、いろんな発表の仕方、来場者とのふれあい方、みんなそれぞれに自由で、日本のアートとずいぶん違うな~という印象を受ける。

こっちに来てまだほとんどアートも街も見てないけど、きっといろんな発見や刺激があるはず。
早くほっつき歩きたい。

by morizo-archi | 2018-11-17 19:46 | 欧州調査レポート(日本比較含む) | Comments(0)

日本vs欧州調査レポート 07 長野 近自然の森

2018.06.04

▲▲▲長野 近自然の森▲▲▲

Ⅰ調査コンセプト

【スイスフォレスターと見る日本の近自然森】

スイスから「近自然森」の在り方を伝えに来たフォレスターのロルフさん。

日本の森のこれからを考える上で、経営観をもって進める森づくりの考え方がとても興味深く、

それを学びに集まる日本の若手林業家たちの視点にも注目しながらワークショップに参加した。 

主催は、近自然森づくり研究会さんhttp://www.sogoh-norin.co.jp/society/index.html と、荒山林業さん。

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長野県大町市荒山林業山林地。

写真では伝えられないほどの気持ち良い森。

自然が作る光と影の心地よい現場で、平日丸1日のプログラムに、働き盛りの若手林業家たちが全国各地から集まった。

北は北海道から南は奈良県まで、35名が参加。私はキャンセル待ちで参加可能に。なかなかな人気だ。

9時から夕方4時まで、木の見方や育成木の具体的な施業方法まで濃厚な内容の参加型講習。

5ヵ所の林産地を実施に見ながらの解説はとても分かりやすく、現場でこそ理解できることが沢山あった。


12年前に長野に1年間通って山の仕事を学んだ森とはまた違う雰囲気の森。

地域が同じでもエリアごと、また、山づくりごとに感じがずいぶん違うなというのが第一印象。


Ⅱ調査内容【近自然の森とは?】

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この度初めて「近自然森」という言葉を知った。

明日香の久住林業・久住さんのお誘いで参加したいと思った理由は、

この「近自然森」の考え方に興味がわいたのと、スイスからこれを提唱するフォレスターがやってくる。

欧州でも林業について調査をしたいと言っていたので、久住さんが是非ロルフを紹介したいと、ありがたいお誘い。

午前中はカラマツ広葉樹混交林の風倒木現場でのトークセッション。


スイスの先駆的フォレスター

ロルフ・シュトリッカーさんhttp://www.kinshizen.jp/homepage/rolf_stricker-jp.htm


山仕事創造舎代表で林業家の香山由人さん

http://yamashigoto.com/webx.php?%E9%A6%99%E5%B1%B1%E7%94%B1%E4%BA%BA


通訳は、近自然学の著者でスイス在住の山脇正駿さん

http://www.kinshizen.jp/homepage/profile-jp.html


具体的で先進的な視点でもって森を見る。

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2015年、100年に一度レベルの大きな台風で何割かのカラマツが倒れた。この写真はその時倒れた木の切株。

カラマツはお金になる大切な樹。しかも年輪を読むと90年生の素晴らしいものも。

経営的打撃は大きかったが「林業で一番難しい選木、伐倒を自然がしてくれた」と言った香山さんの言葉がとても印象深かった。

ポジティブというか、それすら許容する寛大さというか。


ロルフさんに、この森を次にどうつなげるべきかと聞くと。

まず、森を楽しむ。聞こえる音や声を感じ、よく観察する。と。

そして、ここで価値になる樹を見つけ育てる。

カラマツの年輪から幼木時代もストレスなくコンスタントな成長してきたことがわかる。

その他の広葉樹もこれほど大きく育っているのは計画的に施業をしてきた証。と言う。


以前に針葉樹と広葉樹の複層林の試みをしたものの非常に難しく課題が多いことからその施業方法を中断した事例を見学したことがあった。

横に枝を張る広葉樹が間伐時に邪魔になり伐倒が難しくなるし、リスクが多い。にここではそれをどう克服しているのか?


ロルフさん曰く、両方の木を完全に傷つけずに出在することは無理。だから優先順位を付ける。

①大きく育った木、又は育てたい木を守る。

②ブナなど(重要な樹種)は小さくても大切にする。

③真っすぐ育っている広葉樹(貴重な樹)を守る。

そして何より、この森で2080年後に不足する可能性のあるものは何かを考えること。

人間には遠い先の話でも森には一瞬。森に関わる人間は自分の基準だけで考えてはいけない。と。


この森を次もカラマツの育つ森にするか否か悩ましい。

ロルフさんは、自分なら既に育ったカラマツをさらに育て、

成長の悪い木や環境に良くない木を間伐することで現在小さな広葉樹にも陽が当たり育つ可能性が高まる。

この森は現在3040年生が少ないのでその樹齢の木を育てるように森をつくる。と。


大切なのは年齢、大きさ、樹種、環境共に一律にしないこと。

大きな木がいい価格で売れるように育て、そのお金で次の世代を育林する。

一つの森の中で多世代を混在させ、手入れの費用をその森の中で同時進行的に循環させる。

様々な樹種を育てるのは、災害による全滅を避け、時代によって変わる樹種のトレンドをいつでも有効に使えるようにするため。

完全な自然林で人間が林業として営みをするのは無理がある。

かといって自然環境とかけ離れた森づくりをすると非常にコストと労力がかかる。

「自然がかってにしてくれることは人間がやらなくていい。」ロルフさんのその言葉は妙に納得できた。

よく観察して、自然がなろうとする森と自分が目指す森がかけ離れないようにするのが近自然の森なんだと理解した。

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この日一番人気の?樹。みんなの注目を浴びていたカラマツの赤ちゃん。カラマツは自然更新が望ましいらしい。

地表が倒木などで自然に現れ少し盛り上がったところに根づく。山主たちの期待を背負ってここで立派に育っていくことを願う。

この子に限らず、荒山林業ではもしかしたら樹一本一本に名前を付けているのでは?と思うほど、個体ごとを把握している感じ。

こんな愛溢れる林業にも感動する。



次は小径木の白樺がしっかりお金になったという素晴らしい事例の現場。

スキー場跡地。後自然更新17年目。桜、楓、ブナ、シラカバなどが育ち始めている。

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ここでの話は手入れの時期と間伐ポイント。

平地は森が草地だったという事を示すために見学者向けに毎年刈り払っているが、斜面に生えている樹は手入れが遅れていて、

そろそろ何とかしないといけない密集具合。

斜面で間伐する場合は育成木の谷側を支えとして残し、山側はギャップをとるために切る。

ロルフさんは、木が密集しすぎると枝が伸ばせないまま背が伸び風雪時に共倒れになってしまうということを参加者の体を使って説明する。

言葉がわからなくても明るく楽しく伝える解説はイメージしやすい。

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昼食をはさんで昼から行った森は「ロルフと7代目雅行氏の選木バトル」の地。

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2011年ロルフさん来日時にどの木をどう育てるか、お互いの意見をバトルさせたエリア。

7年という月日が経ちそのジャッジがどうだったのかを見る。

どのくらいの時間をかけてどんな森にするかは、環境によって判断するべきで、どの木を残すか伐るかはそれぞれのフォレスターが責任も持って決める。

その判断があっていたのかどうかは、見る時代により変わるし、今間違ったと思っても将来的にはそれがあっていたという可能性もある。

ロルフさんは森が声を発するのをよく聞くことだと言った。

そして時折確認するようにと。手入れが過少すぎていないか、過剰すぎていないか。目指した森が正しかったか。

そして違っていたら修正していく。この見極めがフォレスターの最も大切な仕事のような気がした。


スイスでは、地域ごと森林タイプごとに示した「極相林」という地図があるらしい。

その森が極相林の状態になってもいいかどうかの判断もフォレスターがするという重要な職業。

日本ではそういったポジションが確立されていない。

誰かが昔に決めた施業方法を見直さず永遠と続けている森林は国土の70%の森林の内、ほとんどを占めるような気がする。

それに疑問を感じて悩み迷う若き林業従事者がこの貴重なレクチャーをはるばる聞きに集ったのだと思う。

この現象は「現代の日本の林業が発する声」なのかも。

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この後は、7代目雅行さんの最後の仕事場となった森を見た。倒木によるホウの木の傷をどう見るか。

菌が入ってしまうと腐食が広がり価値が下がる。入っていなければもっと育てて価値を高めることができる。

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この見極めもまたフォレスターの仕事。

ロルフさんの意見は510年間様子を見ながら見極めつつ、他の育成木とのバランを見るというものだった。



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最後に見た森は時折イベントにも使っているというアカマツとブナの混交林。

ここは「恒続林」http://d.hatena.ne.jp/sei-fuchi/20101031という収穫だけをして経営を成り立たせることを目指す森。

育林にコストを掛けず自然に任せることで経営が成り立つ環境になり得る。

今はその方向に促している段階。

それはただ放っておくという意味ではなく、特に幼木には手を掛け過ぎず、自然の原則に従うように見守る。

そうすることでその地にあった健全で個性的な森つくる。

なんだか、近自然の森づくりは、英才教育こそが素晴らしいという発想を反省して、のびのび育てる現代の子育て方法を取り入れ始めたというイメージ。

人間よりもゆっくり育つ樹たちにとって、それが正しかったかどうかはうんと先でないとわからない。

只、今できることは正しい知識の基適切な判断をし、次世代を考えながら愛をもって森をつくる。

これが人間と森が共存できる一つの方法なんだなと感じた。



Ⅲ【Morizo-の目】

 荒山林業7代目の雅行さんという方はすごい方だったようで、道半ばで急死された後も後継者にその思いがしっかりと引き継がれているように感じた。

多様な植生の森を目指して現在若き8代目雄大氏が継承する林業はまさに「近自然の森」。


画一的な育林をせず、自然に近い植生を活かし、且つ「経営が廻るように」林業を考える。

自然状況に近づけることで過度な手間をかけずにすみ、それが経営を助けるという考え方。

ただほったらかすのではなく、お金になる樹(育成木)を見定めて環境を整える。


一本一本の木を見て、その木の何を活かすか、又はあきらめるかを個々に考えて施業を進める。頭を使う林業。スマートフォレストリー?

今回の企画に参加する前までの「近自然森」のイメージは、自然!環境!次世代に!の考えが九分九厘を締めていると想像していた。


それと経営がどう結びつくのかが疑問だったが、想像以上に経営に対する意識を常に持ち、

「自然や環境に良い」だけでは人が森に関わってはいけないという現実を見た気がした。

近自然林とは次世代を見据えて森と人間の健全なありかたを模索し続けるということなのかも。

その意識を現時点にも当てはめて、小さな結果を出しながら進めていく「優しい林業」に見えた。


そして、今回一番感じたことは、この日集まった日本の若き林業家たちの真剣さ。

熱心にメモを取り、質問をし、自分の物にしようとしている姿勢に感激した。

沢山の問題を抱え手立てがないようにも思える現在の日本の林業に明るい光を感じることができた。

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荒山林業さんのABOUT

8代目山主の荒山雄大氏と新妻あゆみさん、そして7代目雅行さんの妻、里利さん。

江戸時代から続く家業を2018年に若き8代目夫婦が自営専業林業家として本格再始動。

スイスの先駆的フォレスターが現在日本で最も近自然の森に近いと称する森林は270haの人工林と天然林。

共に伐期を設けず非皆伐選伐施業を行う。

先代と里利さんが築いてきたネットワークに支えられ迷いながらも一生懸命取り組もうとする8代目の姿に周りの人も賛同し応援している。


by morizo-archi | 2018-06-24 11:18 | 欧州調査レポート(日本比較含む) | Comments(0)

日本vs欧州調査レポート 06 産地祭の意味と役割 

2018.05.05

■■■越前1300年大祭■■■

①調査コンセプト【素材産地の歴史とこれからを感じる】

福井県越前今立。1500年の歴史を誇る和紙の産地。ここで毎年春と秋に神と紙のまつりが開催される。今年で1300年目を迎えるこの祭、歴史の長さが半端ではない。今年の50年に一度の大祭に触れ、産地のこれからを感じてみたいと訪れた。

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②調査内容【節目の祭】

境内に入る鳥居には日本国旗が掲げられ、その両側にはいかにも長年立ち続けている立派な杉や銀杏の樹。紙祖神 岡太神社・大瀧神社。

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この複雑な形状の屋根は一度見たら目に焼き付くインパクト。1843年に建てられたにしてはすごいデザインと精度。

1500年前、村人に紙漉きの技術を伝えた伝説の姫『川上御前』を、和紙の神様・紙祖神として祀る。国の重要文化財「大滝神社」。

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社全体に伝承の物語を描いたデザインもすごいが、使われている材料もかなりの良材。

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天保の大飢饉後の時代にこれだけのものがつくられたのには、信仰の深さがうかがえる。

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2年前に訪れた時は初日と二日目を、今回は最終日の締めくくりを見ることができた。大祭の今回はいつもより一日多い4日間。様々な神事が毎日執り行われる。装束や神輿も普段より増え、来場者も2~3倍とのこと。

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最終日のお昼に勢いよく境内を出発した二台の神輿。細かい細工に漆と金箔、珍しい8角形をしている。ほんとに重いらしく、これを担いで五箇の神社を巡回するのは大変。大祭の時にだけ2台になる神輿に担ぎ手も2倍必要で、今年は沢山の若手が参加していた。

青空と山並みと神輿の鮮やかなコントラストが印象的。この祭りめがけて帰郷した若者も、ずっと祭りを支えてきた地域の人も、活き活きして見える。なんていい祭。

神輿巡回の見せ場でもある「もみ」。各神社ごとに次の神社に神輿を行かせまいと揉み合う。最終地点の大瀧神社に戻るひとつ手前、岩本神社で最後のもみ合いは最大級に。

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みんなもうクタクタで、でも見せ場を盛り上げようと、力を振り絞る。

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夜には山の上の社に神様をお送りする「お上り」という神事が。神様がお上がり用の神輿に乗り換えいよいよ出発。流石大祭だけあって、いつもにない参加者の列が30分かけて急な坂を上っていく。ただ上がるだけでも結構な斜面なところを4日間の疲れもピークで神輿を担いでここを登る。途中途中で担ぎ手交代の声がかかるも、なかなか変わってもらえなのが辛そう。無事に2台とも社に到着し、神様をお返しすると再び空になった神輿を担いで長蛇の列が下山する。そのとき歌われる祭の歌がなんとも言えない雰囲気を作る。人力だけでこんな祭が営営と続けられてきたことを思うと感慨深い。

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下の神社に戻り最後の階段を力を振り絞って登る姿がまたたくましく、見惚れてしまう。

 

 

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まつりに合わせてエリア内のいろいろな場所で催しや作品展示が行われていた。青年部のメンバーがそれぞれ自社の技術を活かした作品を発表。新しいデザインや技法、表現方法でチャレンジしているのがいい。斬新で和紙の可能性をまだまだ感じることができ、ワクワクする。和紙と墨がとても素敵に使われた荒井恵子さんの作品展も工芸館で開催されていた。設計士として和室の可能性を大いに感じる感覚があり創造力が掻き立てられた。

今後の今立が今日の様に若手で活気に満ちた産地になればと、勝手ながらに思う祭だった。

やなせ和紙のご夫妻を筆頭に、今回ご案内いただいた皆さまに感謝いたします。



③まとめ【Morizo-の目】

日本一を誇る歴史と技術を持つ老舗越前ですら刻々と減っていく作り手やメーカー。なくなってしまうには惜しすぎるこの優れた素材や技術をどうしたら守っていけるか。祭をきっかけに地域内外の人たちがどんどん和紙の良さを探求し、表現し、刺激を受け合うことが、まず今できることなのかもしれない。また老舗産地だけあって海外からの関心も高く、欧米人を中心に外国訪問者が多いことにも注目したい。

いずれにしても、産地の歴史ある祭の意味と役割は大きいと感じることができた。


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柳瀬晴夫さん・柳瀬藤志子さんのABOUT

昭和の初めより手漉き襖を漉き始める()やなせ和紙の伝統工芸士ご夫妻。現在も数少ない手漉きメーカーとして後継者を育て技術を継承している。高度な技術を要する本鳥の子ふすま紙から、和紙製小物商品まで、幅広く製造する。近年では楮や三椏など和紙の原料栽培にも携わり、本来の和紙の良さを追求する。祭や地域活動も行いつつ、講演等で各地を飛び回る越前和紙を牽引するご夫妻。


 いつもお世話になりありがとうございます。この度もいいお祭りを見せて頂きありがとうございました。




by morizo-archi | 2018-05-12 15:31 | 欧州調査レポート(日本比較含む) | Comments(0)

日本vs欧州調査レポート 05 山と海のつながりかた 



2018.04.28

▲▲▲吉野林業&牡蠣猪BBQ▲▲▲

①調査きっかけ【年始の林業ツアー】

7代目山守 中神木材 中井章太さんの取り組みにはいつも驚かされる。そして感動する。

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今年1月7日山の神様にお参りをする良き日にちびっこを含む10人ほどで林業地見学&鉞(まさかり)体験の企画がありました。

http://purewoods.com/blog/?p=994

土場でのランチタイムに趣味で猟をする中井さんの仲間に遭遇。

4月に鳥羽から牡蠣が届くのでここでバーベキューをする予定。せっかくなら吉野の猪と鹿も一緒に食べよう!と盛り上がり、ついにその日が来た。

何度も来ている吉野林業地だが、今回は山と海が繋がり、山に返ってくるレアなケースを見てみたくて参加させていただいた。



②調査内容【海の人と山を見る】

午前中は牡蠣養殖の漁師さんと1月のメンバーのご家族と共に、再びあの林業地へ。

雪景色が新緑に変わり、またちがった趣。

出材装置として今後の林業に活かせるか実験中という「スネークライン」

1月に来た時よりも距離が延びていて、いろんな活用方法にも期待が高まる。

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仮設用の鋼管を利用した走行機には斬新な発想が満載。考案者はお寺の鐘を自動で撞く装置を作る上田技研産業株式会社さん。

なんと起動装置に市販の電動ドライバーが使われるという代物。漁師さんも興味津々。

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そして様々な樹齢エリアを見学。

鳥羽の浦村から来た漁師さん曰く、一般的には筏材として竹が使われることが多い中、

鳥羽では地域材を使って桧で筏を作ってきた歴史があるらしい。

かつては耐用年数が10年程あった桧材が近頃3年、下手したら1年というケースがあるとのこと。

それを受けて中井さんが、昨今の木材流通事情を話す。


確かにその理由がわかる状況を設計士としても大いに感じている。

何においてもスピードが求められる時代になって、昔の様に「ゆっくり」が許されない風潮。

伐ってすぐ使うために出材方法や乾燥技術が進化して、ほしいものがすぐ手に入りやすくなった。

その代わりに、長く使うという視点が二の次になることも。

木の場合、最適な時期に伐り、皮を剥きしっかり山で葉枯らし乾燥した後、出材後も乾燥期間を経て適材適所使われてきた。

時間がかかる分、木自身が持つ防腐防虫成分や強度保持など、木のいいところを残せていた。今はそれを活かすことがなかなかむつかしい時代。

昨年中井さんが出材した桧で作った筏はそのあたりを配慮して作られたもの。使う人が何を必要としているか、顔の見えるものづくりならでは。


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何度きても新しい発見あがる林業地ツアー。この日のなるほどは、「龍が昇る」。

一見立派な杉の木が、製材せずとも山で立った状態で難点がわかる例。

杉は水分の多い木で、寒い日にその水分が凍ることで木の内部が膨張し表皮にその割れが見えている。

そんな木でもむやみに切ってしまわず隣の木との関係や周りの環境への影響を見極め、残すか伐るかを決めていく。

自然現象も含めて丁寧に育林を行うのも吉野林業の特徴。


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この日は映画の撮影地となった中井さんの先祖が暮らしていた場所で撮影秘話や偶然?必然?的な不思議な話も聞けた。

山や木、自然の恵みを題材にした河瀬直美監督の映画「vision」。公開が楽しみ。http://vision-movie.jp/sp/



BBQがスタートする頃には土場に沢山の人が。山と海の人だけでなく街や田畑の人もいる。

びっくりするほどの立派なアスパラガスと長ネギ。

これは、中井さんが木をおがくずにし、

山口さんが街で酵素浴http://kousoyoku-en.com/に使った後、

そのおがくずを堆肥として育てた無農薬野菜。

一周廻って吉野の山に戻ってきた。

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吉野の木を肥料に野菜を育てた農家さんも、

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吉野の山で鹿を獲ってきた猟師さんも、

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吉野の桧を筏に使った牡蠣漁師さんも、

吉野の恵みを活かして作ったものを持寄り集合。みんなでそれを囲む贅沢。炭で焼いて丸かじり。甘くてジューシー。もちろん味は絶品。

総勢30名ほどのBBQとなり笑顔があふれる。こんな貴重な機会に参加させて頂き幸せ。



③まとめ【Morizo-の目】

今はひと昔前の様に産地でひとつのものを一生懸命生産していれば生活ができていた時代ではなくなりつつある。確かに大変な時代。でも今回の様にその状況を何とかしようと試行錯誤しながら各地で頑張っている人たちが繋がり、顔を合わせる機会ができたのは、この時代故という気もする。ある意味、満たされた後のステップ。今がそのタイミングなのかもしれない。

         

中井さんの仲間の山師さん、製材所さん、役場の人、農家さん、酵素風呂店で働くスタッフさん、木工職人さんや木を素材に作品を作る作家さんまで、まさに山から町を経て海までつながった瞬間。こんなことがあるんだと、改めて一人の山守さんのやっていることに感動した。家族や赤ちゃんを連れて来た普段あまり山と関わりのない人にも、この素敵な光景からきっといろんなことが伝わったように思う。



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中井章太さんのABOUT

吉野林業の担い手 中神木材山守七代目。昨今の木材価格の低迷に伴う森林経営の先行き不透明感に不安を感じ、既存の原木市場中心の販売体制から、新たに消費者の顔が見える販売流通のしくみをつくるべく新商品開発や林業地ツアー、やまとまち、各地の生産者、人と人、民間と行政をも繋ぐ様々な活動をしている。http://purewoods.com/index.html


この度はこんないい機会に参加させていただきありがとうございました。


by morizo-archi | 2018-05-08 19:18 | 欧州調査レポート(日本比較含む) | Comments(0)

日本vs欧州調査レポート 04 日本一の広葉樹市場

2018.04.14

▲▲▲岐阜広葉樹原木市見学▲▲▲

①調査コンセプト【杉桧の原木市との違いを見る】

昨年東京ビックサイト出店時に知り合った岐阜の「ヤマガタヤ産業株式会社」田中開発本部長さんに広葉樹原木市をご案内頂いた。

毎月2日間開催される競り市は、初日が板材、2日目は原木。今回は大きな市の翌月のため、規模が小さめとのこと。それでこの多さ、大きさ。関西圏の杉桧原木市とずいぶんな差がある。
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買い手は、事前にめぼしいものを見に来てアタリを付けておいて組合の振り子さん(ここの振り子さんは鐘を振ってなかったけど)の掛け声に合わせて競り落す。だれも手を上げないものもあれば、人気の材はみんなほしがり競り上がっていく。売り手の希望金額から始まり倍以上になるものもあったけど、この日の落札率は5割を切っていたように思う。

会場には売り手さんも来ていて、買い手が誰も手を挙げないと値下げの合図を出す。その値段なら興味あり!という買い手との駆け引きが始まり、競りの中で落札額の折り合いを振り子さんが付ける。このときお互い横にいるのに直接は目を合わせず振り子さんを介して意思表示をするのが私的にはなんとも面白い。
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②内容【材について】

広葉樹は日本中から岐阜に集まるらしい。世の中の主流が杉桧の取引となっていたころから熱心に広葉樹を売り買いし続けた実績が、日本一を誇る広葉樹市場に成長させた。良材沢山集まるから、いい買い手が集う。いい買い手が集うから、いい材が出品される。年に3回の大市ではさらにその威力が増すらしい。

樹種も最近出材量が多いケヤキに始まり、クリ、トチ、ナラ、赤松、など多種多様。そのほとんどは育林されたものではなく、寿命を迎えた老木や神社仏閣のご神木と言った立派なもの。

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なんといっても針葉樹市との違いは原木一本の材積。この日の最大は7㎥近かった。こんなのどうやって使うのか?そもそも普通の製材所ではきっと製材できないはず。目あいも良く、年輪も細かい良材。きっと銘木賞に見合う価格で落札されたに違いない。特に大きいものや、選ばれし良材は立米単価ではなく、一本単価で値が決まる。

材の状態も様々で、ウロが大きく入ったものや、病気にかかって手当を受けていた跡のある木、土場に置かれてる間に飛んできた種が発芽して別の植物が育ち始めているもの・・・。広葉樹の使い方は千差万別なため、状況がどうであれほしい人にはお目当て材となる。そういった面でも杉桧との違いは大きい。

トレーラーでないと運べない巨大な丸太やド迫力の原木を横目に、前日の板市の材も見学させてもらった。
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板材と言えども、とにかくデカい。去年原木で数百万円で落札された材が今年は板材になって競りに出されていたらしく、かなりいい値で取引されたとのこと。これは成功例だが、原木購入はバクチとよく言われる。良材が曳けたら儲かるけれど、そうでない場合もあれば、材の中に石や鉄が入っていて帯鋸の刃が欠けるなど、曳いてみないとわからないリスクも多い。

育林された杉桧と違って自由な形をしている分だけに歩留まりも悪く、ロスが大きい。そんなリスクに今一度挑んで商品開発を試みるヤマガタヤ産業さん。すごいなーと思う。

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社長さんは現在岐阜銘木協同組合の会長もされていて売り買いにも参加。あれはヒッコリ。スキーの板にする木だよ。こっちはヤナギ。これはいい玉杢が出てるね。あれは本人しかわからない暗号のメモ。などなど、いろいろ教えてくれた。
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次々と巨大な良材を見せてもらい、もう感覚がマヒしてくる。サイズも大きすぎて写真に納まりきらない。
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一緒に行った才本さんは背が高いはずなのに直径がその背を優に越している。例の成功例のケヤキの一部。ほんとに日本にあった木なのか疑ってしまうほどのサイズ感。

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元(木の地面に近い部分)の欠片ですらこのカタマリ。人が一緒に写ってないと大きさがよくわからない。

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広葉樹だけでなく杉桧もある。これはほぼ無節で8m。東濃桧の赤味は薄いピンクでとてもきれい。いったい何に使ったらいいのやら。

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珍しい黒柿孔雀杢。これが希少で高値が付くことを知らない地方では薪にして燃やされていたことや、屋久杉のような産地認証のシールの有無が値を左右することなどの裏事情を教えてもらったり、最近沢山出回っているケヤキは安く、この前まで安価だったトチは流通量が減ると途端に高騰し始めている、など興味深い話は尽きない。
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③まとめ【Morizo-の目】

広葉樹の幅広い市場に加え、多彩な用途とデザイン性は、杉桧以上に時代や流行の影響を受けているように思えた。またその流れが速く、時価の変動が大きいように思う。

市場の規模が大きいことに驚いたものの、ここは日本中から集まった最大級の市場だから。供給量は杉桧に比べるとかなり少ないため、需要が少し増えるとすぐに品薄になる。用途によっては少なくとも2、3年寝かさないと使えないものも多く、決して安定的に欲しい材がいつでも手に入るわけではないのかもしれない。

実際建築現場からは「○○は今手に入りにくい」「○○の値がすごく上がっている」などと言われ仕様変更を打診されることも少なくない。広葉樹は外材の割合も多く、輸入先の国策や、国際情勢によっても状況がコロコロと変わる不安定な市場だと思う。

経済の為に必要以上に売買していると、そのうち200300年生の貴重な資源を枯渇させてしまう可能性もある。遠い先まで見据えた計画的な伐採や、環境保全を誰が何処でどのタイミングで考えているのか、どんなビジョンを立てているのかとても気になる。というか心配になる・・・。


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最後にヤマガタヤさんの準備中工場も見学させてもらった。染色ピアノ塗装品や、藍染天板、その他にも5000枚を超える天板材など、桁外れの商品力を武器に新たな展開を試みる元気な会社。地方の産業と雇用を支えているのも素晴らしいと思った。製材所から流通、そしてメーカーへ、100年の実績と、時代に沿った柔軟性で、一つの新しい材木屋さんの在り方がここにあると感じた。この度は貴重な体験をさせて頂きありがとうございました。


ヤマガタヤ産業株式会社さんのABOUT

創業大正72月(設立昭和498月) ヤマガタヤ産業が誕生してから100年。岐阜で生まれ、岐阜で育ってきた、地元密着企業。岐阜が大好きで、岐阜に何か貢献したい、という想いでいろいろな事業にチャレンジしている。



◆◆◆「建築設計」「建築に関わる職人」「木と森・林業」をテーマに◆◆◆

今年10月から欧州を滞在調査予定。それに先立ち日本国内も改めて視察。随時レポートを配信中。










by morizo-archi | 2018-04-19 22:05 | 欧州調査レポート(日本比較含む) | Comments(0)

日本vs欧州調査レポート 03 日本建築を改めて

和歌山県岩出市
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「根來寺」(ねごろでら)
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桜の名所にもなっているこのお寺。せっかくなのでこのタイミングに行きました。
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お目当てはこの多宝塔。日本最大の木造大塔、とってもバランスよく特に斜めから見た姿が美しいです。翼のような伸びやかな屋根とふっくらちょっとかわいい円形の亀腹。2階部分が細すぎないのがちょうどよくって、他で見る多宝塔以上に心を奪われました。このデザインをした人のバランス感覚すごいです。
多宝塔の多くは真ん中の心柱は地面まで達してないのにあの相輪を支えて、建物本体の平面に対して屋根の平面が非常に大きい。構造的にはかなり無理があるデザインだけどこの大塔、1547年から建ち続けている。安定感抜群。
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このお寺自体、秀吉さんと対立したせいで大塔以外のほとんどが消失したらしく、今の伽藍の大半は江戸時代以降のもの。それでもすでに2、300年は経過していて、しっかりと風格を取り戻しています。

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池に浮かぶ聖天堂への太鼓橋は船が通過できるように一部床が開閉する仕掛け?!
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使い込まれた欄干が浮造(うずくり)になって触りごこちがすごくいい。
そこに至る廊下の一部に懇親の修繕跡が。
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痛んだ桧の厚板をそっくり取り換えるのではなく、必要最小限の堅木で補修。なんだか愛おしく思える姿です。こうして手当てを繰り返して使い込まれる木の良さや、それを叶える日本建築の技術を誇りに思います。
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そしてそれを、静かに大切に守りたいと思うお寺さんや、ありがたく拝観するに日本人も誇りです。この日も参拝者を受け入れる穏やかなお坊さんの顔や、地域のボランティアガイドのおじいちゃん、ごみをきれいに持って帰るお花見の家族の姿がたくさん見れました。京都や奈良のメジャーな寺院とはまた違う地方の静かなお寺。雅な空気もすごくここちよくて、ああ日本人でよかったな~と思う調査となりました。

by morizo-archi | 2018-04-02 12:55 | 欧州調査レポート(日本比較含む) | Comments(0)

建築設計室Morizo- 設計士の目線で暮らしや空間のあれこれを発信します。


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