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2016年 09月 15日 ( 2 )

「例えばこの木」 10

[刻印の意味]
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中神木材の刻印です。
「例えばこの木」出材編 最終回はこの刻印に込める思いを書いてみます。
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丸太の断面をよく見てください。真ん中近くに節の跡が見えますね。木はバームクーヘンのように何重にも輪っかが重ねられていますが、これが年輪。一年で一層づつ、外に外に増えていきます。よく成長する暖かい季節と、成長が進まない寒い季節の差で年輪ができるのです。層の数を数えるとその木の歳がわかってしまいます。そしてこの節のスパッと切った跡の位置で、この木が何歳の時に「枝打ち」という作業がされたのかも分かるのです。中井さんのひいおじいさんが植えて、おじいさんが枝打ちをしたのかなぁと想像します。
枝打ちしたその外側はまるで何もなかったようにまた年輪が始まっていますよね。木は人間と同じように怪我をしても徐々に肉を盛って傷を修復します。そして節の跡を閉じ込めてしまうのです。そうして手間暇かけた木を、例えば節の位置よりも外側で大きく製材するとします。すると節の見えない、上質な和室に使いそうな、美しい柱がとれるというわけなのです。このように若い時期に適切に枝打ちなど手入れをすることで、良材とされる木に育つのです。
前に書いたように、吉野はもともと樽に使う木を育てるために節のない年輪の細かい育林地術が発達しました。そうして育った材は日本の美意識と共に建築材としても脚光を浴び始めます。日本三大銘木にあげられる吉野材は高値で取引された時代もありました。数代に渡って手間を掛けた価値を感じられ、山がちゃんと廻っていた時代です。
戦後の拡大造林では、日本中どこもかしこも杉、桧を植え国民の住宅供給に備えました。そして2、30年前までは需要が供給を上回っていたのです。
なのに、今になって、、、、やっとお嫁に行くいちばんいい年頃になったこの子達は、他の素材や外国材に押されてお嫁に行きにくくなってしまったのです。このままではいかず後家、活躍できないままお婆ちゃんになってしまいます。

本当に木が不要になったのなら仕方ありません。でも実は、国内で使われている木のうち、国産材はたったの3割程度なのです。この前までは2割強だったとも聞いています。需要は減っていても、木が使われなくなったわけではないのです。
実は日本は世界2位の森林大国です。国土の7割が森林です。そのうちの4割が人工林です。使うつもりで育てて使える状態になった木を使わずに、わざわざ海外から買って木を使っているのです。びっくりです。
その理由は1つではないと思いますが、一時はコストにあると言われていました。でもそれもあまり差が無くなり、今ではものによっては国産材の方が安く安全なものが手に入るようになっています。それでも、若干安い外国産材がまだ主流なのです。政治・経済や国際社会のお付き合いも大切ですが、この状況はあんまりです。
他にもいろいろな事情はあるはずですが、この事実をエンドユーザー、消費者はほとんど知らない。知るきっかけがないまま外国の木を使ってる人は少なくないと思うのです。外国の木が悪いと言っているのではないんですよ。でも、間近にあるものの存在を知らないで、わざわざもったいないことをしてるということが気になって気になってしょうがないのです。
・・・・熱くなりすぎました。スイマセン。

大黒柱のはなしに戻ります。
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地面から6mの位置で直径約30cm。年輪はまんまるで芯はほぼ真ん中。とてもいい材です。
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トラックが往復する間、大黒柱の使われるイメージを描いて待ちます。その間も中井さんとレッカーの操縦士さんは黙々と作業を進めています。
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この大黒柱の嫁入り先は決まっていますが、他の子たちもいいところにお嫁に行き大事にされるように原木市に備えます。断面をきれいにして手塩に掛けてきたことを見てもらいます。
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この日は3往復。2台目のトラックの助手席に厚かましくも載せてもらい、市場の土場まで連れて行ってもらいました。大黒柱は、後日製材所さんに引取りに来てもらうまでしばらくここで休憩です。トラックの運転手さんが、「あの木、大黒柱やから」と作業車の人に念を押しました。私も横から、「やさしくお願いします。やさしくお願いします。」

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翌日、中井さんは市場に運ばれた木達に心を込めて「K」の刻印を打ちました。一本一本に4世代の思いが詰まっています。

競市に参加する製材所さん達はどの刻印が誰のものかみんな知っています。木は挽いてみないとわからないとは言え、信用商売の木材取引は刻印がとても大事です。トレサビリティーのシステムができるずーーーーっと前から行われてきた超明確産地認証です。

7代続く山守、中神木材の「K」を付けた材は安心してお嫁にもらってもらえるはずだと、自信を持って送り出します。でも実際には花嫁の父親のような気分かもしれません。手塩にかけた娘がちゃんとした評価を受けるのか否かはタイミングや買い手の事情で左右されることは少なくありません。
きっと祈るような気持ちで市の日を迎えるのではと思います。これは、どの山守さんも同じ気持ちだと思います。1人ではできない山仕事の業界。自分だけが得をすることを望む人はいません。林業全体が大変な事になっているこの時代を何とか生き抜いて、自分が受け取ったバトンを次世代に渡さなければという意識が必ずあります。全員に確認してないですが、きっとあります。そう思えるほど、どの山守さんも信念を持ってこの大変な仕事に従事しているのです。
愛娘たちが自分の手から離れる最後の作業「刻印」はさながら花嫁衣装を着せてあげるようなものなのかもと思ってしまいます。どうか、嫁いだ先でも幸せになってほしいと願います。


さて、たった一日の出材作業にお邪魔しただけで、あまりの感動にこんなにも書いてしまいましたが、実はまだ書き足らないくらいです。しかも、こんなに素敵な木のこと山のこと、エンドユーザーにはまだまだ伝わっていないということを痛感する日々です。もっともっと伝えなくちゃ。と思っています。また機会がありましたらお付き合いください。

最後までお読みいただいた方にはお疲れ様でございました。
今年は「月一山へ」行っています。もしご興味ありましたらお気軽にお問い合わせ下さい。
ありがとうございました。(おわり)
Morizo-内田




by morizo-archi | 2016-09-15 23:02 | 「例えばこの木 大黒柱のヘリ出材」 | Comments(0)

「例えばこの木」 09

[ヘリポートでの作業いろいろ その2]
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いよいよあの子の番です。根元の断面部分に、前の週に山で書いた「大黒柱」の文字が見えます。ワイヤーがさっとフックに掛けられ一旦平地に移動させます。
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中井さんは一本一本を最終確認します。
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曲がりを見て、難点が無いかを探します。
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上を見て、下を見て、表を見て、裏を見て、入念に確認します。この確認作業は全ての材に行っていました。山でも見ていたように思うのですが、平地でもう一度丁寧に確認するのだそうです。全ての子がなるべくいいところにお嫁に行けるように思案するのです。難点というとなんだか間違って伝わりそうですが、110年間屋外で風雨に耐えてきたのです。嵐の日もあったし、鹿に皮をめくられ日もあったかもしれません。クリーンルームで育ったわけではないのです。少し姿勢が偏ってたり、シミやそばかすの一つもあるでしょう。それを踏まえて長いままお見合いに挑むべきか、需要の多い3mや4mにカットして挑むべきか、これはとても重要なポイントです。判断を誤ると110年の思いがお見合い相手に伝わりきらない可能性も出てしまうのです。
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今回の大黒柱は約6m必要です。丸太は10m。カットする位置が決まりました。両方ともが幸せになれるよう願いながらチェーンソーを入れます。丁寧に、慎重に、手際よく、作業は進みます。こうして4世代で育てた木は嫁入りの日を迎えるのです。
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大黒柱の断面に「K」の刻印が打たれました。次回の最終回でこの刻印に込める思いをお伝えしたいと思います。(つづく)

Morizo-内田
森林・林業地案内 http://morizo-archi.com/soza-tour-forestry.htm


by morizo-archi | 2016-09-15 08:01 | 「例えばこの木 大黒柱のヘリ出材」 | Comments(0)

建築設計室Morizo- 設計士の目線で暮らしや空間のあれこれを発信します。


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