春のドイツを東奔西走
2024年 07月 01日
春のドイツを東奔西走
―各地の個性を改めて―
今年の春にもドイツに行った。かれこれドイツに通い始めて6年目。EUになる前に立ち寄った1997年と滞在前に下見に行った2017年も含めると通算10回目の渡独となる。
内、2年間ベルリンに滞在し、ドイツ国内を小旅行したこともあったので結構各地を見ていたつもりでいた。
だけど、今回は東へ西へはたまた南へも行く機会があり、改めて各地の大きな違いを知ることとなった。
今回のドイツは、すっかり第二の故郷と思っているベルリンと、近年仕事でよくいくライプツィヒを起点に、シュトゥットガルト、フランクフルト、イェーナ、ゲルリッツ、ミュンヘン、デュッセルドルフと、まさに東奔西走の慌ただしい滞在となった。
ライプツィヒのホテル改修デザインの仕事に始まり、ベルリンのパートナーTakumi(和室の木工工房)との障子ワークショップ開催、ブックフェアや木工メッセ視察や、歴史建築の改修セルフビルドにも参加した。加えて休暇旅行や、今後に向けてのマーケティングなど、目的や滞在期間も様々に飛び回った2か月間だった。
ほとんどの行先で現地の人とのミッションがあったこともあり、単に街を訪れるのとは違う収穫が沢山あった。
そこで改めて感じたことは、ドイツって想像以上に地域による違いがある。ということ。
それもそのはず、ドイツにはブンデスラントという16の州があり、歴史的な背景により各州、各地域の個性は色濃く残っている。部分的に異なる国になった時代もあり、文化や言語は固有のものがあった。
今でも各州は独自の憲法を持ち、学校制度まで異なるなど、まるで別の国の様にルールが違う。日本人にとっては想像しにくい国家体制なのだ。
中でもベルリン州は旧東ドイツエリアに在りながら市内を東西に分断された冷戦時代を経て、今では190カ国を超える海外出身者が暮らす世界的でも有数の特殊な国際都市だ。
そんなベルリンに滞在し、他の地域にこれまではあまりご縁がなかった私は決してドイツを知っているとは言えないし、よく「ベルリンはドイツじゃない」と言われることを肝に銘じていたのだけれど、、、ベルリン以外のエリアもひとつのカラーではないということをいまさらながら改めて知ることになった。
言われてみればベルリンの壁が崩壊し東西統一を果たしたのはほんの34年前のこと。
日本人からするとその歴史は知っていても、ドイツはドイツという一つのイメージを持っている。しかし、旧東西時の名残が意外と沢山残っていたり、世代によっては結構意識も違っていたりする。各州にはそれぞれ旗があり、とても個性的でバラエティーに富んだ文化や気質を持っている。
一極集中ではなく自立した自治があることは州の規模や人口差だけではない違いを生み、それがドイツの一つの魅力になっているのではないかと思う。

Deutschgo.com資料より
https://www.asahi-net.or.jp/~vg5t-ngi/bunkaken/arekore/are_laender.html
今回訪れた中でとりわけ印象に残っているのが、ドイツの東の端ゲルリッツ(Freistaat Sachsen州)で古い登録文化財を自然素材でセルフ改修をしているご夫妻のお宿にお邪魔し、1週間土壁塗りをした経験。
おおらかでパッション溢れる彼らとの時間はポーランドの国境に近い長閑な村とも相まってとても心地よく心の洗濯ができた。
あこがれのライフスタイルを送る彼らを見ていると人生の大切なことを学べる気がする。


そしてオランダの国境に近い西の端デュッセルドルフ(Nordrhein-Westfalen州)では、「とにかく会わなければ始まらないから是非!」と来訪を強く勧めてくれたAnnaと対面を果たした。
器プロジェクトにとても関心を持っている彼女は、手仕事に関連がありそうな人を紹介してくれたり、秋に計画している和室ワークショップへのアドバイスをくれたりと、とても親切でエネルギッシュ。初めて会ったにもかかわらず地元の人ならではの街の見どころを3日間みっちり案内してくれた。
実は、彼女の息子Robinは私が渡独する直前に大阪の事務所にヴァルツ(ドイツの伝統的な風習:修行の旅人)として器プロジェクトを訪ねて来た。黒ずくめの伝統装束で突然現れた彼に仰天しつつも手助けをしたり、数日泊めてあげたことがきっかけでRobinの母親Annaと知り合った。
おかげで西の大都市デュッセルドルフにもご縁が広がりそうな予感がする。


南は、ドイツ好きの日本人なら必ずと言っていいほど訪れるであろう“ロマンチック街道”に初めて行くことに。
その足掛りとして訪れたミュンヘンは今回で3回目。7年前に来た時から進んでいない旧市街中心広場の工事は、遺跡が出たために大幅に遅れていまだに出来上がる気配がない。
それでも春の陽気に観光客で溢れたミュンヘンはゲルリッツやデュセルドルフ、ベルリンともまるで違う南ドイツらしい雰囲気。
私は“ロマンチック”にあまり関心がなく、この先も行くことはないと思っていた街道の旅は、ドイツ鉄道の度重なるストライキに行く手を阻まれながらも、思いのほか楽しむことが出来た。そこで見たお城や教会の建築技術は素晴らしく、歴史的に様々な国からの影響を受けてアレンジされてきた重層的な建築様式も実見できた。


足掛け6年通っているドイツを改めて堪能し、ドイツの地域差にいまさら驚く。やっぱりドイツは一口に語れない。
この秋の渡独でも新しい発見があるかもしれない。そしてきっといつも通り帰国の度に日本を再発見するのも楽しみだ。
主宰:内田利惠子
【建築設計室Morizo-】http://morizo-archi.com/
【器プロジェクト】https://utsuwa-project.com/

