半年ぶりに戻ったBerlin。ドイツの若手建築家と共に展覧会を開催した。 昨年ハンブルクで行った和室模型展のアップデート版をしたくて、彼らに打診したのは帰国直前の2020年の年末。
帰国後も連絡を取り合って内容を検討し毎年6月末に開催される「Tag der Architektur」(建築の日)に載せてNOKU事務所を占拠し開催することなった。
2日間の企画にしては盛りだくさんな内容で若干盛り込みすぎ。
両日1時間刻みに小さな和室講座やワークショップを開催し沢山の人に関心を持ってもらうことが出来た。
1つ目は和室模型展示と和室講座。
コンセプトやデザインの違う8種類の和室模型を展示し好きか嫌いかを赤青シールでジャッジしてもらう。
意外にも主旨説明をしっかり読み、模型をじっくり観察して、沢山の人が和室リサーチに参加してくれた。
異国の人たちの和室趣向がある意味よくわかり興味深い。
和室講座は4つのテーマに絞り1時間毎に開催。
私のたどたどしいドイツ語にもかかわらず、真剣に和室について知ろうと耳を傾ける来場者。
質問や意見も飛び交い15分のコースはいつの間にか1時間コースへ。
日本や和室への関心の深さに驚きつつも、まだまだ情報を得る機会が少ないことを実感。
いろいろな可能性を感じる機会にもなった。和室講座は今後も続けていきたいプログラムだ。
2つ目は職人ワークショップとして、日独の木工職人が講師となり、来場者が日本の鋸を使って木の薄切り対決をするというもの。
日本とベルリンの会場をZoomで繋ぎ“引いて切る“日本の鋸の使い方をレクチャー。
初めて触る日本の鋸でコンマ数ミリを競い、優勝者には表彰状が授与された。
職人ワークショップとしてはこの他にも、日独職人道具箱拝見として、互いの手仕事道具をお披露目。
繊細さとダイナミックさの差が印象的な日独相互の道具。
珍しいアンティーク道具などもあり職人同士の興味も深まった。
こうした小さなことが人や技術を繋ぎ拡がっていくきっかけとなることを願う。
そして、3つ目は一番の難関。
UTSUWAプロジェクトのお披露目。これは2年間のドイツ滞在で1番奮闘したプロジェクトの絶好の発表の場になる。
メンバーの結成からプロトタイプ制作までの6ヵ月間の成果をやっと半年越しにリアルでお披露目することが出来る喜びの企画でもあった。
不思議とNOKUの2人はこのUTSUWAを会場に設置することを強く望んだ。
ありがたい提案だが個人的にはかなりのプレッシャーがあった。
理由は離れた日本からこのBerlin生まれの小さな和室を解体運搬設営するメンバーが平日ピンポイントのタイミングで招集するのは困難だから。
しかも要領がわかっていないと時間内の設営は難しい。。。。
案の定プロジェクトメンバーは仕事や休暇でBerlinを離れていて、集まったのは私を含め3人。
にもかかわらず、制作リーダーの職人Justusがいたため3人で解体に要した時間は20~30分。
搬出運搬も重機は不要。NOKUの2人も加わり5人で工具も使わず1時間足らずで設営できてしまった。
前日までの大心配は何だったんだと思える組み立ての容易さに計画者が改めて感心するのもおかしいか。
半年ぶりにコロナ規制が緩和されやっと日の目を見た私たちのUTSUWA。
関わるメンバーや見聞きする人はもうこの箱を「UTSUWA」と抵抗なく呼び始めている。
プロジェクト結成から1年。この先の発展が楽しみだ。
NOKUのこの二人と一緒に開催できたこと。
ベルリンのMitteという一等地で沢山の人に来てもらえたこと。
コロナ禍だったにも関わらず数カ月間のオンライン会議を続けて本当に展覧会が開催できたこと。
私にとっては全てがまたしても奇跡だった気がする。
兎に角、再渡独1週間で開催したこの展覧会では多くの刺激と学びがあり今後の妄想も膨らむばかり。
少しずつアクションを積み重ねて2年半のネットワークをこれからも深め広げていきたいと思う。
このUTSUWA01プロトタイプの仕口モックアップを見てふと、仕口(ドイツ語でverbindung=接続、連結、連携などの意味がある)はUTSUWAメンバーや日独職人交流の象徴で、まさに大切な“継ぎ手“だと感じた。
Organisers: NOKU STUDIO + 建築設計室Morizo-
Photo:David Frank
Instructor: Justus Kissner + Hisashi Kaku
Support: coordinates. + interiorsuenaga + des-s-art*spoon
Tool providers:Hishka Industry Co.+ Kanejun Ltd.
Joint presentation:UTSUWA project