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日独「木材産業・木造建築」シンポジウム04

【日本の木材サプライチェーンにおける付加価値の創出のためのデジタル化】
(農林水産省 木材産業課木材製品技術室)
木材産業の建築部門の大半が低層住宅用材。内4割が軸組み工法、1~2割が2×4、残りがその他。
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この資料を見るといかにその割合が大きいかがわかる。
これは2017年のデータ。現在55万戸の新築低層住宅は今後着工棟数が減ることから、
非木造だった高層建物や非住宅建築をいかに木造化できるかが需要をキープする要になるとのこと。
戦争と戦後復興で枯渇した木材は1955年から木材輸入の自由化が始まり自給率は2002年に最低の18%にまで下がった。
その後合板需要増と共に国産材が少し伸び、近年バイオマス活用により36%にまで回復。
と言ってもまだ36%。
1975年以降、製品市場が出来て流通が多岐にわたり始める。
30年前まではプレカットがまだ10%程度だったけど今では90%がプレカット。
現在このプレカットメーカーが独立しかつての材木商の役割を担っている。
大手プレメーカーでは膨大なデータが蓄積されているため、これを山にフィードバックすることで
需要と供給のバランスが良くなる。まだまだ未開発のデーターのシステム化、デジタル化による生産効率の向上が期待される。

【ディスカッション】
ドイツでは2015年の難民問題と地球温暖化対策が重なり住宅供給に木材を使う動きが盛んになっている。
いずれの都市でも人口増の傾向にありNRW州も増えている。森林資源が豊富なため300万㎥のストックがあり供給可能。
しかしこれまで会社や人材のプラットホームがなく横のつながりが少なかった。
2012にスタートした木材センターは木材関連の異業種が1つのテーブルで話す機会を作った。
というロスマン教授の説明を聞きながら日本にはこんな場所があるかな?とふと思った。

日本が木造化を進めるきっかけは?という質問に、パリ協定の影響が大きいと林野庁の方が答えられた。
これによりやっと前向きに大規模建築や公共建築の木造化が進み始めたらしい。
この手の協定は外交のお付き合いと思いきや、木材業界にとっては案外救世主だったんだと感心。
環境省や経産省の管轄がそれぞれあるようで政策は経産省が作ったとのこと。ドイツの環境省の方は興味津々に聞いている。

ドイツ側から森林管理の管轄の質問もあった。
日本は全森林の3割が国有林。5割が民間林。残りが行政。
民間林の割合が多く、しかも10ha以下の森林所有者が90%も!このため政策の実行が難しい。

木材自給率の目標を聞かれ、現在3割のところ5割を目指す。と林野庁の方が答えた。
意外な回答だった。理由は木材利用の5割が製紙材とのことで、これを国産材で賄うのは無理があるといったような内容だった。
海外では林業と製紙業はだいたいセットで成り立ってると聞いたことがあるけど、日本ではなぜそうならないのか不思議。
何か外交的な制約でもあるのかな?

日本側からドイツへ今後の育林樹種のバランスの質問。
現在針葉樹は十分ストックがあり問題はないが温暖化に耐えられる樹種や広葉樹を増やし針葉樹率40%を目指すらしい。
単一樹種にしないことで気候変動や害虫発生時でも森林が全滅しない森を作るとのこと。
長野で15年ほど前に複層林を試みて失敗だったという事例をみたことがある。あれはきっと施業のしにくさだけを取り上げて失敗と諦めたんだな思った。
日本でも自然に近づける森づくりの動きがあるけど、視点によっては難しさも多いと思う。
それを踏まえた上で50年後100年後のための森林整備の在り方が今問われている。

温暖化に対する林業の質問に日本ではまだ対応樹種の選定は検討中らしい。
ドイツでは森林をどう維持するかは国のテーマであり、政治のテーマだそうで、この辺りは大きな差を感じる。
木材センターの運営に補助金はなく資金難とのこと。近隣諸国では国の支援は一般的のようだけど、ドイツは木材産業に対して予算がつかないらしい。
計画林業のコンサルタントやデーター提供などの事業で運営を維持している。素晴らしい。

鋭いディスカッションで両国の様々な事情が見えた気がする。




by morizo-archi | 2019-05-16 22:40 | 欧州デザインレポート(日本比較含む) | Comments(0)

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