「木材産業・木造建築」日独シンポジウム (ダイジェスト)
濃厚な三日間だった。
NRW州の環境省の方の温かい歓迎を受けて始まったシンポジウム前夜の食事会。
日本大使館の方と林野庁の方や木造研究の先生と合流し、緊張の中早くもいろいろな興味深い話を聞く。
翌シンポジウム初日は集成材工場の解説・見学から始まり、
木材センターでの講演や報告、ディスカッションと軽食コーヒーブレイクを挟みながら分刻みにスケジュールが進む。

私は初日最後の発表だったから1日中緊張が続いてた。
「木造建築:日本の現状と日独の共通する課題」というテーマで30分。
想像以上の緊張で言葉が詰まる。同時通訳の方に事前に資料を渡していたのに準備していたことの半分も話せなかったかも。少し心残り。
初日会議後の公式夕食会には市長さんや日本の総領事さん達も来られて素晴らしい料理のおもてなしを受け、お土産まで頂いた。

2日目は森林教育センターの見学に始まり、両国の今後の森林管理政策や法律、気候変動に対応する管理計画やバーチャルシミュレーションシステムの活用まで目を丸くしっぱなしの1日だった。
林業という時間のかかる事業であることや、法改正のスピードの遅さ、森林所有者の細分化や意識の遅れなど、
日独共通の課題も多く意見交換できたことがとても有意義だったと両国の団長役を務めた方達が述べられた。
今の日本の林業があまりにも残念なことになっているといつも嘆いてしまうけど、俯瞰で見ると歴史や時代の事情で仕方が無かったのも確か。
団長さんが言ってたように拡大造林で作った資源を今まさに活用できる時期が来たとも言える。(ちょっと遅れ気味だけど)
対応策としての森林税導入の検討等もう何十年も前から始まってたことや、
パリ協定が引き金となって今年施行されることになったこと、
林地の登記や境界確定がそんなにも進んでいないことなど知らなかったことも沢山。
そしてこの状況をまさに今から変えていく。そんなタイミングに立ち会えた気分になった。
2日間で計4カ所の施設見学、12人の発表、5回のディスカッションを重ねて包括的かつ中長期的な視点で意見交換を濃厚に行った。
このみっちりスケジュールと完璧な進行に国際会議の無駄の無さを見た。同時通訳の方の仕事も見事。
私が普段仕事や活動で目にしている範囲がいかに小さいか、世界がどれほど進んでいるかも思い知った。
森林産業の盛んなNRW州ザウアーラント地域。
日本から遠く離れたここでの交流が自国を改めて振り返るきっかけとなることは間違いない感じがしたし、それもシンポジウムを行う大きな意義の一つと思った。
個人的には消化しきれないほどの沢山の情報と国レベルの動きを目の前で見ることができ大興奮の3日間だった。とてもいい機会を頂いた。
私の発表内容は他の方と規模も内容もかなりギャップがあったけど、
ドイツの人たちにとって日本の高い匠の技術やシンプルで機能的なデザインの評価は想像以上に高く、このテーマに自信を持っていいと確信した。
そして自分が日本に何ができるかを考えてもっと研鑽を積もうと強く思うことが出来た。
一番印象に残ったのはシンポジウム前夜に行った森のレストランのシェフがコンセプトにしているという「環境ディッシュ」という言葉。
すごいインスピレーションを感じてしまった。
昔はルール地方から来る鉱山労働者に向けて食事と宿を提供していた。
それを発展させて地域で取れる旬の素材や肉を美味しく料理して、今ではグルメも来るホテルレストランになったと話があった。
今、目の前にある素材をどう使ってどんな魅力的なものを提案できるか。どう価値を表現して伝えるか。決してデザインが先行したエゴならないように。
この先のMorizo-のコンセプトとして「環境ディッシュな建築」を目指すのはどうかと真剣に考え始めてる。