日本vs欧州調査レポート

日本vs欧州調査レポート 06 産地祭の意味と役割 

2018.05.05

■■■越前1300年大祭■■■

①調査コンセプト【素材産地の歴史とこれからを感じる】

福井県越前今立。1500年の歴史を誇る和紙の産地。ここで毎年春と秋に神と紙のまつりが開催される。今年で1300年目を迎えるこの祭、歴史の長さが半端ではない。今年の50年に一度の大祭に触れ、産地のこれからを感じてみたいと訪れた。

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②調査内容【節目の祭】

境内に入る鳥居には日本国旗が掲げられ、その両側にはいかにも長年立ち続けている立派な杉や銀杏の樹。紙祖神 岡太神社・大瀧神社。

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この複雑な形状の屋根は一度見たら目に焼き付くインパクト。1843年に建てられたにしてはすごいデザインと精度。

1500年前、村人に紙漉きの技術を伝えた伝説の姫『川上御前』を、和紙の神様・紙祖神として祀る。国の重要文化財「大滝神社」。

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社全体に伝承の物語を描いたデザインもすごいが、使われている材料もかなりの良材。

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天保の大飢饉後の時代にこれだけのものがつくられたのには、信仰の深さがうかがえる。

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2年前に訪れた時は初日と二日目を、今回は最終日の締めくくりを見ることができた。大祭の今回はいつもより一日多い4日間。様々な神事が毎日執り行われる。装束や神輿も普段より増え、来場者も2~3倍とのこと。

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最終日のお昼に勢いよく境内を出発した二台の神輿。細かい細工に漆と金箔、珍しい8角形をしている。ほんとに重いらしく、これを担いで五箇の神社を巡回するのは大変。大祭の時にだけ2台になる神輿に担ぎ手も2倍必要で、今年は沢山の若手が参加していた。

青空と山並みと神輿の鮮やかなコントラストが印象的。この祭りめがけて帰郷した若者も、ずっと祭りを支えてきた地域の人も、活き活きして見える。なんていい祭。

神輿巡回の見せ場でもある「もみ」。各神社ごとに次の神社に神輿を行かせまいと揉み合う。最終地点の大瀧神社に戻るひとつ手前、岩本神社で最後のもみ合いは最大級に。

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みんなもうクタクタで、でも見せ場を盛り上げようと、力を振り絞る。

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夜には山の上の社に神様をお送りする「お上り」という神事が。神様がお上がり用の神輿に乗り換えいよいよ出発。流石大祭だけあって、いつもにない参加者の列が30分かけて急な坂を上っていく。ただ上がるだけでも結構な斜面なところを4日間の疲れもピークで神輿を担いでここを登る。途中途中で担ぎ手交代の声がかかるも、なかなか変わってもらえなのが辛そう。無事に2台とも社に到着し、神様をお返しすると再び空になった神輿を担いで長蛇の列が下山する。そのとき歌われる祭の歌がなんとも言えない雰囲気を作る。人力だけでこんな祭が営営と続けられてきたことを思うと感慨深い。

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下の神社に戻り最後の階段を力を振り絞って登る姿がまたたくましく、見惚れてしまう。

 

 

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まつりに合わせてエリア内のいろいろな場所で催しや作品展示が行われていた。青年部のメンバーがそれぞれ自社の技術を活かした作品を発表。新しいデザインや技法、表現方法でチャレンジしているのがいい。斬新で和紙の可能性をまだまだ感じることができ、ワクワクする。和紙と墨がとても素敵に使われた荒井恵子さんの作品展も工芸館で開催されていた。設計士として和室の可能性を大いに感じる感覚があり創造力が掻き立てられた。

今後の今立が今日の様に若手で活気に満ちた産地になればと、勝手ながらに思う祭だった。

やなせ和紙のご夫妻を筆頭に、今回ご案内いただいた皆さまに感謝いたします。



③まとめ【Morizo-の目】

日本一を誇る歴史と技術を持つ老舗越前ですら刻々と減っていく作り手やメーカー。なくなってしまうには惜しすぎるこの優れた素材や技術をどうしたら守っていけるか。祭をきっかけに地域内外の人たちがどんどん和紙の良さを探求し、表現し、刺激を受け合うことが、まず今できることなのかもしれない。また老舗産地だけあって海外からの関心も高く、欧米人を中心に外国訪問者が多いことにも注目したい。

いずれにしても、産地の歴史ある祭の意味と役割は大きいと感じることができた。


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柳瀬晴夫さん・柳瀬藤志子さんのABOUT

昭和の初めより手漉き襖を漉き始める()やなせ和紙の伝統工芸士ご夫妻。現在も数少ない手漉きメーカーとして後継者を育て技術を継承している。高度な技術を要する本鳥の子ふすま紙から、和紙製小物商品まで、幅広く製造する。近年では楮や三椏など和紙の原料栽培にも携わり、本来の和紙の良さを追求する。祭や地域活動も行いつつ、講演等で各地を飛び回る越前和紙を牽引するご夫妻。


 いつもお世話になりありがとうございます。この度もいいお祭りを見せて頂きありがとうございました。




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by morizo-archi | 2018-05-12 15:31 | 日本vs欧州調査レポート | Comments(0)

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