日本vs欧州調査レポート 04 日本一の広葉樹市場
2018年 04月 19日
2018.04.14
▲▲▲岐阜広葉樹原木市見学▲▲▲
①調査コンセプト【杉桧の原木市との違いを見る】
昨年東京ビックサイト出店時に知り合った岐阜の「ヤマガタヤ産業株式会社」田中開発本部長さんに広葉樹原木市をご案内頂いた。

買い手は、事前にめぼしいものを見に来てアタリを付けておいて組合の振り子さん(ここの振り子さんは鐘を振ってなかったけど)の掛け声に合わせて競り落す。だれも手を上げないものもあれば、人気の材はみんなほしがり競り上がっていく。売り手の希望金額から始まり倍以上になるものもあったけど、この日の落札率は5割を切っていたように思う。

広葉樹は日本中から岐阜に集まるらしい。世の中の主流が杉桧の取引となっていたころから熱心に広葉樹を売り買いし続けた実績が、日本一を誇る広葉樹市場に成長させた。良材沢山集まるから、いい買い手が集う。いい買い手が集うから、いい材が出品される。年に3回の大市ではさらにその威力が増すらしい。
樹種も最近出材量が多いケヤキに始まり、クリ、トチ、ナラ、赤松、など多種多様。そのほとんどは育林されたものではなく、寿命を迎えた老木や神社仏閣のご神木と言った立派なもの。

材の状態も様々で、ウロが大きく入ったものや、病気にかかって手当を受けていた跡のある木、土場に置かれてる間に飛んできた種が発芽して別の植物が育ち始めているもの・・・。広葉樹の使い方は千差万別なため、状況がどうであれほしい人にはお目当て材となる。そういった面でも杉桧との違いは大きい。

板材と言えども、とにかくデカい。去年原木で数百万円で落札された材が今年は板材になって競りに出されていたらしく、かなりいい値で取引されたとのこと。これは成功例だが、原木購入はバクチとよく言われる。良材が曳けたら儲かるけれど、そうでない場合もあれば、材の中に石や鉄が入っていて帯鋸の刃が欠けるなど、曳いてみないとわからないリスクも多い。
育林された杉桧と違って自由な形をしている分だけに歩留まりも悪く、ロスが大きい。そんなリスクに今一度挑んで商品開発を試みるヤマガタヤ産業さん。すごいなーと思う。




一緒に行った才本さんは背が高いはずなのに直径がその背を優に越している。例の成功例のケヤキの一部。ほんとに日本にあった木なのか疑ってしまうほどのサイズ感。

元(木の地面に近い部分)の欠片ですらこのカタマリ。人が一緒に写ってないと大きさがよくわからない。

広葉樹だけでなく杉桧もある。これはほぼ無節で8m。東濃桧の赤味は薄いピンクでとてもきれい。いったい何に使ったらいいのやら。



広葉樹の幅広い市場に加え、多彩な用途とデザイン性は、杉桧以上に時代や流行の影響を受けているように思えた。またその流れが速く、時価の変動が大きいように思う。
市場の規模が大きいことに驚いたものの、ここは日本中から集まった最大級の市場だから。供給量は杉桧に比べるとかなり少ないため、需要が少し増えるとすぐに品薄になる。用途によっては少なくとも2、3年寝かさないと使えないものも多く、決して安定的に欲しい材がいつでも手に入るわけではないのかもしれない。
実際建築現場からは「○○は今手に入りにくい」「○○の値がすごく上がっている」などと言われ仕様変更を打診されることも少なくない。広葉樹は外材の割合も多く、輸入先の国策や、国際情勢によっても状況がコロコロと変わる不安定な市場だと思う。
経済の為に必要以上に売買していると、そのうち200~300年生の貴重な資源を枯渇させてしまう可能性もある。遠い先まで見据えた計画的な伐採や、環境保全を誰が何処でどのタイミングで考えているのか、どんなビジョンを立てているのかとても気になる。というか心配になる・・・。

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