◆◆◆「建築設計」「建築に関わる職人」「木と森・林業」をテーマにドイツ、北欧を滞在調査をします。10年前に訪れた産地を含め、新たなネットワークや専門家に案内いただき国内も改めて調査します。
その模様を随時UPしていきます。◆◆◆
今回は明日香村で林業家として独立した久住一友さんに案内いただいた。 吉野川上村で働いていた時のご縁があった林業地や、
盛りだくさんな内容となった。
①調査コンセプト
【さまざまなタイプの林業地を見てきた久住さんの視点で吉野林業を見る】
久住さんとの出会いは、以前スギダラ関西の大阪弁屋台大学に登壇いただく際にヒアリングさせていただいたのがきっかけ。
幼少期の体験や関西の様々な森林で木や林業にまつわる仕事をされたこと、海外の森林の在り方を見たことなど、今に至る経緯も興味深い。
なにより、純粋に森や暮らしを良くしたいとキラキラとした目で語る久住さんに林業の未来を感じ、現地のご案内をお願いした。

②内容
【三ヵ所の林業地見学】
はじめに行った林業地は銘木吉野材を育てる歴史ある林業地。
林道を30分ほど歩いて到着した先には樹齢300年の立派な杉。
圧巻。流石。堂々。そんな言葉がついでる迫力。
吉野林業の歴史は500年と古く、その独特な施業は今も引き継がれている部分が多い。
現地に来ると他の林業地とまた違う空気感というか、時間の流れというか、不思議な感覚になる。

1ヘクター当たり1万本植林し、5年、10年スパンで枝打ちや間伐を繰り返す。
土壌と手間が育んだ性のいい樹は日本三大銘木のと言われる所以。
定規で引いたような真っすぐな杉の人工林。久住さんは「日本らしい」とスイスのフォレスターに言われたという。良いとされる状態を目指して何十年も施業を繰り返して生み出される均一性。有機物にしてこの統一感はすごいことだと思う。欧州ではどんな施業が行われているのか是非知りたい。
次の見学地も見事な杉・桧が育てられている林業地で、こんなに車で入れる林道の近くに良材が残されているのは珍しい。多くの吉野林業は急傾斜で道がつけにくい。材が高値で取引されていた時代ではヘリ出材が一般化され材を傷めず出在することが容易だったが、原木単価がガタっと落ちた現在では、高値が付く材以外の木は出材コストに見合わず切り捨てることが多くなった。ヘリの会社が現在1社だけになってしまった理由を、需要と供給のコストバランスが合っていないのではと久住さんは語る。
うろに人が入れるほどの大木や先祖が大切に育ててきた樹齢数百年の良材も、相続税や借地返還のために切られることもあるらしい。
境界がはっきりしなくて管理が進まないこともよく聞く話で、山には問題が山積している。
銘木地の吉野でさえ大変な状況ということは、メジャーでない産地はどうなっているのだろう。

最後にお邪魔したのは、20年生の若い林。
親から2ヘクタールを受け継いだオーナーさんは林業に無縁な暮らしをしていたが、
一度も手入れをしてこなかった林業地にソーラーパネルを設置するために久住さんに相談。
せっかくなのでと何とか切った材を活用できるように作業道や施業計画を提案されて初めてこの土地に関心を持ち、退職後の楽しみが生まれつつある。
ここでは自生する雑木を切らずに複層林を目指す計画とのこと。
オーナーさんの意向と現状から、久住さんらしい提案が出されて緩やかに方向を変えていく森林。
今は小さな動きだが、今後の林業の新しいスタイルが見える気がする。
③まとめ【Morizo-の目】

ラボでは一緒に場所づくりをしている仲間の方達が明日香鍋を用意してくれた。
屋久島からの移住者さんや料理家さん。頼もしく穏やかな人柄の方ばかり。美味しく楽しい素敵なひと時。
林業を林業だけでとらえない広い視点で山を見、木を見、日本の未来を見ている。そして実際にいろいろなことを実践し始め人が集まりそのムーブメントを作っている。決して派手なことをするのではなく地道にひたむきに純粋に。そんな人柄に魅かれて人が集うのも素敵♡
この日共に企画を依頼した沖本大工さんのつながりで素敵な人たちとも沢山出会えいいご縁が生まれたのもきっと久住力。
ほんとにありがとうございました。
欧州調査では、スイスのフォレスターさんにも会いに行って久住さんの見た森を私もぜひ見てみたいと思います。
久住一友さんのABOUT
1980年大阪府出身。
森林に関わる様々な仕事を経て、2016年に久住林業を設立。
林業地で行われていることと現代の暮らしの価値観の相違
に違和感を覚えていた頃に、スイス林業に出会う。
帰国後、日本でもスイスのような日常に森がある暮らしを
つくりだしたいと、環境面と経済面を両立させた森づくり、
そこと繋がった地域づくり、今はない価値観を創り出すラ
ボラトリーを同時進行で小さく始めだしたばかり。