「例えばこの木」 04

[ヘリコプターを使うワケ]
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あ、来た。今度こそ。
へたな写真を撮るか、肉眼にしかと納めるか、迷います。
ヘリは姿が見えず音だけが近づいたと思ったら急に現れます。どうしてここがわかるのだろう?
何やら赤い紐がすうぅぅーっと下りてきて、先っちょに大き目のアメフトヘルメットのようなものがくっついています。
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ヘリが見えてから、アメフトヘルメットが地上に下りてくるまで数十秒という感覚です。
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それを西田さんがキャッチして丸太をくくっているワイヤーを装着します。
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と同時に、さっとその場から離れるのです。この一連の作業はとっても円滑で、ごく普通に、流れるように行われているのですが、良く考えるとすごいことな気がします。
事前にどっちに逃げるかは確認しているようですが、その瞬間に丸太は中に舞い上がります。怖くないのかな?ワイヤーが外れてしまうことはないのかな?機長さんは西田さんが見えているのかな?いろんな疑問が沸いてきます。
このヘリ出材は昭和40年代から行われていたそうで、吉野では珍しくない出材方法です。急傾斜の多い地形と密植間伐伐採がこの方法を選ぶ理由になっています。吉野では植林するときに他産地よりもつめつめに植えます。(8千~1万2千本/ha)100m×100mのスペースに1万本。ざっくり言うと畳1枚に2本です。他産地では畳1、2枚に1本程度ゆったり植えてすくすく育てます。吉野では1本当たりのスペースが狭いので太くなるのに年月がかかるのですが、その分年輪が細かく、足元と頭のてっぺんの太さに差の少ないスラーッとしたべっぴんさんが育つのです。元々吉野材は酒樽を作るのに適した材として発展しました。節があってはお酒が漏れてしまうので無節の子を育てることに精を出したのです。
その方法はまたの機会にとしますが、そうして手塩にかけた良材を、望まれたタイミングで一本一本吟味して、お嫁に出すのです。皆伐はしません。みんな伐ると書いて、「かいばつ」と読みます。ひと山全部を一斉に伐るなら、下から順番に出したり、道を作って運んだり、電線のようなワイヤーを設置して下したりできますが、ここではそういった方法をとりません。
もっと育てるいい子を残しながら、今のタイミングでお嫁に行くべき子を選びます。吉野では残す子も、出す子も、傷なく運ぶルートとしてさまざまな理由から空中を選んでいるのです。

なのでこの地域では出材事業がメインのヘリコプター会社が成り立っていたのです。ヘリ出材を初めて知った10年前はそんな理由など知る由もなく、ただ「すごい!」、「カッコいい!」と反応してしまっていたのです。(つづく)
Morizo-内田

by morizo-archi | 2016-09-08 08:00 | 「例えばこの木 大黒柱のヘリ出材」 | Comments(0)

建築設計室Morizo- 設計士の目線で暮らしや空間のあれこれを発信します。


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