カテゴリ:「例えばこの木」( 10 )

「例えばこの木」 10

[刻印の意味]
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中神木材の刻印です。
「例えばこの木」出材編 最終回はこの刻印に込める思いを書いてみます。
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丸太の断面をよく見てください。真ん中近くに節の跡が見えますね。木はバームクーヘンのように何重にも輪っかが重ねられていますが、これが年輪。一年で一層づつ、外に外に増えていきます。よく成長する暖かい季節と、成長が進まない寒い季節の差で年輪ができるのです。層の数を数えるとその木の歳がわかってしまいます。そしてこの節のスパッと切った跡の位置で、この木が何歳の時に「枝打ち」という作業がされたのかも分かるのです。中井さんのひいおじいさんが植えて、おじいさんが枝打ちをしたのかなぁと想像します。
枝打ちしたその外側はまるで何もなかったようにまた年輪が始まっていますよね。木は人間と同じように怪我をしても徐々に肉を盛って傷を修復します。そして節の跡を閉じ込めてしまうのです。そうして手間暇かけた木を、例えば節の位置よりも外側で大きく製材するとします。すると節の見えない、上質な和室に使いそうな、美しい柱がとれるというわけなのです。このように若い時期に適切に枝打ちなど手入れをすることで、良材とされる木に育つのです。
前に書いたように、吉野はもともと樽に使う木を育てるために節のない年輪の細かい育林地術が発達しました。そうして育った材は日本の美意識と共に建築材としても脚光を浴び始めます。日本三大銘木にあげられる吉野材は高値で取引された時代もありました。数代に渡って手間を掛けた価値を感じられ、山がちゃんと廻っていた時代です。
戦後の拡大造林では、日本中どこもかしこも杉、桧を植え国民の住宅供給に備えました。そして2、30年前までは需要が供給を上回っていたのです。
なのに、今になって、、、、やっとお嫁に行くいちばんいい年頃になったこの子達は、他の素材や外国材に押されてお嫁に行きにくくなってしまったのです。このままではいかず後家、活躍できないままお婆ちゃんになってしまいます。

本当に木が不要になったのなら仕方ありません。でも実は、国内で使われている木のうち、国産材はたったの3割程度なのです。この前までは2割強だったとも聞いています。需要は減っていても、木が使われなくなったわけではないのです。
実は日本は世界2位の森林大国です。国土の7割が森林です。そのうちの4割が人工林です。使うつもりで育てて使える状態になった木を使わずに、わざわざ海外から買って木を使っているのです。びっくりです。
その理由は1つではないと思いますが、一時はコストにあると言われていました。でもそれもあまり差が無くなり、今ではものによっては国産材の方が安く安全なものが手に入るようになっています。それでも、若干安い外国産材がまだ主流なのです。政治・経済や国際社会のお付き合いも大切ですが、この状況はあんまりです。
他にもいろいろな事情はあるはずですが、この事実をエンドユーザー、消費者はほとんど知らない。知るきっかけがないまま外国の木を使ってる人は少なくないと思うのです。外国の木が悪いと言っているのではないんですよ。でも、間近にあるものの存在を知らないで、わざわざもったいないことをしてるということが気になって気になってしょうがないのです。
・・・・熱くなりすぎました。スイマセン。

大黒柱のはなしに戻ります。
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地面から6mの位置で直径約30cm。年輪はまんまるで芯はほぼ真ん中。とてもいい材です。
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トラックが往復する間、大黒柱の使われるイメージを描いて待ちます。その間も中井さんとレッカーの操縦士さんは黙々と作業を進めています。
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この大黒柱の嫁入り先は決まっていますが、他の子たちもいいところにお嫁に行き大事にされるように原木市に備えます。断面をきれいにして手塩に掛けてきたことを見てもらいます。
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この日は3往復。2台目のトラックの助手席に厚かましくも載せてもらい、市場の土場まで連れて行ってもらいました。大黒柱は、後日製材所さんに引取りに来てもらうまでしばらくここで休憩です。トラックの運転手さんが、「あの木、大黒柱やから」と作業車の人に念を押しました。私も横から、「やさしくお願いします。やさしくお願いします。」

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翌日、中井さんは市場に運ばれた木達に心を込めて「K」の刻印を打ちました。一本一本に4世代の思いが詰まっています。

競市に参加する製材所さん達はどの刻印が誰のものかみんな知っています。木は挽いてみないとわからないとは言え、信用商売の木材取引は刻印がとても大事です。トレサビリティーのシステムができるずーーーーっと前から行われてきた超明確産地認証です。

7代続く山守、中神木材の「K」を付けた材は安心してお嫁にもらってもらえるはずだと、自信を持って送り出します。でも実際には花嫁の父親のような気分かもしれません。手塩にかけた娘がちゃんとした評価を受けるのか否かはタイミングや買い手の事情で左右されることは少なくありません。
きっと祈るような気持ちで市の日を迎えるのではと思います。これは、どの山守さんも同じ気持ちだと思います。1人ではできない山仕事の業界。自分だけが得をすることを望む人はいません。林業全体が大変な事になっているこの時代を何とか生き抜いて、自分が受け取ったバトンを次世代に渡さなければという意識が必ずあります。全員に確認してないですが、きっとあります。そう思えるほど、どの山守さんも信念を持ってこの大変な仕事に従事しているのです。
愛娘たちが自分の手から離れる最後の作業「刻印」はさながら花嫁衣装を着せてあげるようなものなのかもと思ってしまいます。どうか、嫁いだ先でも幸せになってほしいと願います。


さて、たった一日の出材作業にお邪魔しただけで、あまりの感動にこんなにも書いてしまいましたが、実はまだ書き足らないくらいです。しかも、こんなに素敵な木のこと山のこと、エンドユーザーにはまだまだ伝わっていないということを痛感する日々です。もっともっと伝えなくちゃ。と思っています。また機会がありましたらお付き合いください。

最後までお読みいただいた方にはお疲れ様でございました。
今年は「月一山へ」行っています。もしご興味ありましたらお気軽にお問い合わせ下さい。
ありがとうございました。(おわり)
Morizo-内田




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by morizo-archi | 2016-09-15 23:02 | 「例えばこの木」 | Comments(0)

「例えばこの木」 09

[ヘリポートでの作業いろいろ その2]
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いよいよあの子の番です。根元の断面部分に、前の週に山で書いた「大黒柱」の文字が見えます。ワイヤーがさっとフックに掛けられ一旦平地に移動させます。
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中井さんは一本一本を最終確認します。
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曲がりを見て、難点が無いかを探します。
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上を見て、下を見て、表を見て、裏を見て、入念に確認します。この確認作業は全ての材に行っていました。山でも見ていたように思うのですが、平地でもう一度丁寧に確認するのだそうです。全ての子がなるべくいいところにお嫁に行けるように思案するのです。難点というとなんだか間違って伝わりそうですが、110年間屋外で風雨に耐えてきたのです。嵐の日もあったし、鹿に皮をめくられ日もあったかもしれません。クリーンルームで育ったわけではないのです。少し姿勢が偏ってたり、シミやそばかすの一つもあるでしょう。それを踏まえて長いままお見合いに挑むべきか、需要の多い3mや4mにカットして挑むべきか、これはとても重要なポイントです。判断を誤ると110年の思いがお見合い相手に伝わりきらない可能性も出てしまうのです。
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今回の大黒柱は約6m必要です。丸太は10m。カットする位置が決まりました。両方ともが幸せになれるよう願いながらチェーンソーを入れます。丁寧に、慎重に、手際よく、作業は進みます。こうして4世代で育てた木は嫁入りの日を迎えるのです。
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大黒柱の断面に「K」の刻印が打たれました。次回の最終回でこの刻印に込める思いをお伝えしたいと思います。(つづく)

Morizo-内田
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by morizo-archi | 2016-09-15 08:01 | 「例えばこの木」 | Comments(0)

「例えばこの木」 08

[ヘリポートでの作業いろいろ その1]
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ヘリポートにまでお邪魔してしまいました。ここから先は別の日に作業する予定だったのが、同日の作業に変更になったとのことで、つい付いて来てしまいました。
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ヘリポートではこの日出材した丸太達が待っていました。大型運搬車がすでに待機しています。そこにレッカー車登場。これがまたカッコいいのです。
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レッカーの操縦をするこの方、これまでに運んだいろいろなものをスマホで見せてくれます。神社に生えてた大きな木の特殊伐採や、お寺の門横の大きな仁王さんなどいづれも巨大で慎重な作業を要するものばかり。きっとこの仕事を誇りに思ってやってるんだなと感じます。
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中井さんが戻ってきて、作業開始です。手に持ってるのはトビという木を手で動かす道具です。
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大きなトラックに大きな丸太がどんどんと積み込まれます。ただ積み込むだけではなく傷をつけないように、安定するしょうに、手際よく積み込みます。
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トラックの運転手さんはトビで吊り上げられた丸太をちょいと捕まえてテトリスのように丸太の隙間に下していきます。何気ない作業のようですが、すごく気をつかっているのがわかります。トビの先は鳥のくちばしのような金物になっていてこれを丸太に引掛けて操るのですが、丸太のごく端っこを適確に捕えるのです。ちゃんと刺さっていないとすっぽ抜けてあぶないですし、無駄にさし過ぎると材が傷物になる。そこのギリギリのところを狙うのです。荷台に納まった瞬間に、丸太からワイヤーをすっと外し、レッカーのフックに掛けなおす。その瞬間にレッカーのアームは中井さんの元へと戻り、次の玉掛のワイヤーがフックに取り付けられる。全てが連動するように無駄のない動きです。3人ともがお互いの次の動きを意識しながら絶妙なタイミングで動いています。この荷積み作業、正直、地味で単調な作業に見えるのですが、ずっと見ていて飽きません。地味に見える作業程とてもかっこいいと思えてしまうのです。
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お昼も持たずにくっついてきた私に、中井さんがおにぎりを届けてくれました。朝からふたつの山を駆け回ってクタクタのはずなのにこんな気遣いまで。おにぎりがおいしすぎて心底恐縮してしまいました。(つづく)

Morizo-内田
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by morizo-archi | 2016-09-14 08:00 | 「例えばこの木」 | Comments(0)

「例えばこの木」 07

[帰り道]
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ヘリ出材に使ったワイヤーです。ヘリポートにまでお邪魔して置いてある束を見ました。Lワイヤーの数だけ取材したということですが、たくさん出したなー。これ、ヘリが無かったらどうやって出してたんだろう。って思います。
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この日最後のヘリ出材の木です。3mを3本一気にあげました。
ヘリ出材は事前の準備がいろいろいると書きましたが、ワイヤーの準備もその一つです。事前に出材する木一本一本にくくっておきますが、さすが丈夫なワイヤーだけあって結構重いのです。それを準備段階で持って登ってくくっておくのです。
以前下見に連れて行ってもらった時に、一つ持たせてもらいました。肩が痛く、なかなか歩きにくかったのですが、中井さんはそれを3本も持っていました。なのに手ぶらでもしんどい山道を鼻歌でも歌いそうな身軽さで進んでいたのを、私が必死についていく。山いきさんってほんとすごいなーって思います。

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地下足袋は必需品です。スパイク付です。私もかっこよさと憧れだけで買ってしまいました。
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背中のリュックには何が入っているんでしょうか?身軽に見えますが、ライトやトランシーバー飲み物。作業の長さによってはきっとチェーンソーや燃料、お弁当も持って上がりますよね。
帰り道、少し話を聞かせてもらいました。この仕事で一番難しいのは何ですか?
「なれかなぁ」
???
「仕事がある程度できるようになってきたら、慣れで気が緩むことがある」
「慣れてきたころが危ない」
山いきさんの仕事は常に危険と隣り合わせです。それも大きなけがに繋がることはおおいに考えられる仕事です。山の上で怪我をしたら降りていくだけでも大変なことです。慣れた自分をコントロールするのが難しいということなのでしょうか。意外な答えにハッとし、そしてなるほど。納得しました。(つづく)

Morizo-内田
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by morizo-archi | 2016-09-13 08:05 | 「例えばこの木」 | Comments(0)

「例えばこの木」 06


[実家を離れる瞬間]
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宙に浮きました。
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すーぅーーっと吸い上げられて行くようです。
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あっという間に空高く離れていきます。あの木です。大黒柱になる子です。育った山を離れてお嫁に行くのです。
この子はすでに嫁入り先が決まっていますが、普通はこの後お見合いをします。吉野では競市がお見合い会場となります。中井さん達山守はきっと娘を嫁に出すような気分だと想像してしまいます。ひいおじいさんが植えて、おじいさんが幼少期を育て、お父さん、中井さんがこの日まで手塩にかけた。一本一本がいいところに行って、喜ばれ、永く愛されて欲しい。そう願うのは、これまでの時間と育ててきた人の思いを考えると決して大げさな事ではないです。
この日は40往復ヘリを飛ばして、たぶん5、60本は出材したと思いますが、そのどれもに同じことが言えるのです。
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真ん中に横たわっている長い木、途中で切っていますが、根元側の3mの子はお嫁に行けて、それより上の部分はこの場に残るのです。事情があり、お嫁に出してあげれないのです。その事情こそが現在の山の問題。いえ、日本の大問題なのです。
「昔はほうきで掃いたように全部持っていったんやって」西田さんが言います。もっと細い丸太や、枝もです。なぜ今は置いて行ってしまうのでしょうか?
答えは、木材単価が下がってしまったからです。ヘリ出材は人手が少なくて済むというメリットがありますがそれでも機長、西田さん、中井さん、そしてヘリポートで丸太を受け取る職人さん。最低4人です。
その後にもヘリポートから市場の土場まで持っていくのに丸太を整える人、積む人、運ぶ人が必要です。もちろん出材前に、伐る木を選定、伐採、サシ入れ、ワイヤー掛けと、出材だけでいったい何人工必要なのかと思うのです。
人員が少ない分、機材は必要です。ヘリコプター、レッカー、大型トラック、移動車やチェーンソーまで上げるときりがないですが、1つでも欠けるとこの子たちはお見合い会場まで行けないのです。
木は鉄やコンクリートに比べると何とか人の手でも扱える、有り難い素材ですが、それでも丸太は大きく重い。これを「運ぶ」という作業はなかなか重要なポイントなのです。しかも、何十年、何百年、沢山の手間と思いを込めて育てられた木を、お嫁に行く最後の最後で傷物にするわけにはいきません。大切に、丁寧に、見送りたい。かといってここにお金がかかりすぎるとお見合いのハードルが上ってしまい、貰い手がいなくなる恐れがあるのです。このギリギリの線をすれすれでやっている。それが現在の林業の現実です。ゆえに、泣く泣く山に置いて行く子を生んでいるのです。とっても残念でなりません。選ばれしミスユニバースですら全身を連れて出せないのです。
私、今度来てこの子連れて帰ってもいい?
「ええよ。」中井さんにも今はどうすることもできません。
もちろん私が担いで連れて帰ることもできないのです。(つづく)
Morizo-内田
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by morizo-archi | 2016-09-12 07:00 | 「例えばこの木」 | Comments(3)

「例えばこの木」 05

[淡々と。それがかっこいい。]
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「きゅいんきゅいんきゅいんきゅいん、ル」
まっすぐに近づいてきて真上で旋回することなく止まるのです。
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ライトを点灯して場所を知らせます。が、上空3、40メートルです。ホントにこれが目印になるのでしょうか?
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間髪おかずにロープが下りてきます。
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迷いなく真っ直ぐに降りてくるのです。それもなかなかのスピードで。リモコンで動かしているわけでも、コンピューターで制御しているわけでもないのですが、信じなれない正確さです。この日は35mのロープ。ヘリの位置だけが下すポイントを左右するのです。どんな訓練をしたらこんな神業ができるようになるのでしょうか?
アカギさんのこの技術。「自分の会社のこと褒めるのなんかあれやけど、これはホンマにすごいとおもうゎ」と、ものすごく照れながら西田さんが言いました。ロープの先に筆を持たせたら字が書けるのではと思えるほどだそうです。
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見ました?
・・・・も一度見てみましょう。
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合図しました。
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ロープ降りてきました。
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ワイヤー装着して離れます。

・・・・ね。見ましたよね。西田さんほぼ動いてないでしょ。合図から離れるまで、同じ場所に立ったままです。何度来ても毎回すごい精度なのです。

普通のことのように淡々と流れるように作業を進める西田さんと機長。地上と上空はトランシーバーでわずかに言葉を交わすだけなのです。その距離を埋めるのは信頼できるお互いの技術。ほんとにすごいなーと感動してしまうのです。かっこよすぎて惚れてしまうじゃありませんか。(つづく)
Morizo-内田
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by morizo-archi | 2016-09-09 07:00 | 「例えばこの木」 | Comments(0)

「例えばこの木」 04

[ヘリコプターを使うワケ]
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あ、来た。今度こそ。
へたな写真を撮るか、肉眼にしかと納めるか、迷います。
ヘリは姿が見えず音だけが近づいたと思ったら急に現れます。どうしてここがわかるのだろう?
何やら赤い紐がすうぅぅーっと下りてきて、先っちょに大き目のアメフトヘルメットのようなものがくっついています。
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ヘリが見えてから、アメフトヘルメットが地上に下りてくるまで数十秒という感覚です。
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それを西田さんがキャッチして丸太をくくっているワイヤーを装着します。
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と同時に、さっとその場から離れるのです。この一連の作業はとっても円滑で、ごく普通に、流れるように行われているのですが、良く考えるとすごいことな気がします。
事前にどっちに逃げるかは確認しているようですが、その瞬間に丸太は中に舞い上がります。怖くないのかな?ワイヤーが外れてしまうことはないのかな?機長さんは西田さんが見えているのかな?いろんな疑問が沸いてきます。
このヘリ出材は昭和40年代から行われていたそうで、吉野では珍しくない出材方法です。急傾斜の多い地形と密植間伐伐採がこの方法を選ぶ理由になっています。吉野では植林するときに他産地よりもつめつめに植えます。(8千~1万2千本/ha)100m×100mのスペースに1万本。ざっくり言うと畳1枚に2本です。他産地では畳1、2枚に1本程度ゆったり植えてすくすく育てます。吉野では1本当たりのスペースが狭いので太くなるのに年月がかかるのですが、その分年輪が細かく、足元と頭のてっぺんの太さに差の少ないスラーッとしたべっぴんさんが育つのです。元々吉野材は酒樽を作るのに適した材として発展しました。節があってはお酒が漏れてしまうので無節の子を育てることに精を出したのです。
その方法はまたの機会にとしますが、そうして手塩にかけた良材を、望まれたタイミングで一本一本吟味して、お嫁に出すのです。皆伐はしません。みんな伐ると書いて、「かいばつ」と読みます。ひと山全部を一斉に伐るなら、下から順番に出したり、道を作って運んだり、電線のようなワイヤーを設置して下したりできますが、ここではそういった方法をとりません。
もっと育てるいい子を残しながら、今のタイミングでお嫁に行くべき子を選びます。吉野では残す子も、出す子も、傷なく運ぶルートとしてさまざまな理由から空中を選んでいるのです。

なのでこの地域では出材事業がメインのヘリコプター会社が成り立っていたのです。ヘリ出材を初めて知った10年前はそんな理由など知る由もなく、ただ「すごい!」、「カッコいい!」と反応してしまっていたのです。(つづく)
Morizo-内田

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by morizo-archi | 2016-09-08 08:00 | 「例えばこの木」 | Comments(0)

「例えばこの木」 03

[ヘリ事情と職人さん]
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ヘリ、やっと見えた!
何とか尾根まで這い上がって、やっと伐採現場に着きました。もうクタクタです。山守さん達はこの登山の後、力仕事をするのです。信じられません。
中井さん達は少し先の方で作業をしている様子。「お疲れさんー。よーこれたなー。」いつもの明るい笑顔です。「ちょっと急遽向こうの現場までいかなあかんようになってん。でも間に合ってよかったわ。」待っててくれたんです。申し訳ない。
「もう、ええようにしといてや」と職人さんに言い残して軽快に去っていく中井さん。何があったんだろ?
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先週伐ってもらった大黒柱。これだ。間に合った!
でも周りにあった木はもうなくなってて、運び終わっているようです。
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きょろきょろしてるといつの間にかヘリが来ていて、少し向こうにいる職人さんは何かを持っています。瞬く間にヘリが去っていきました。一瞬の出来事です。え?
「玉掛」の様子やその方法が全く見れず、目の前を大きな丸太が吸い上げられて行きました。なんて素早い、、、、。感動の一瞬をカメラに納めたかったのにあっという間にチャンスは過ぎていきました。
恐る恐る職人さんに話しかけてみます。まだ来ますよね?ヘリ。「おぉ、ちょっと間ーあくけどな」・・・・会話が終わる。怖い人かな?リュックから缶コーヒーを出して渡してみます。「おぉ、ありがとうー。」サングラスの中の目が笑ってってほっとしました。
すいません、段取り狂わせてしまったんとちゃいますか?「いやー、かまへんー。一生にいっぺんのことやもんなー。大黒柱。」私を施主と思っているみたい、、、、。
私の家のじゃないんです。設計させてもらっただけなんです。「すごいやん。設計士さん?」木こりさんの方がよっぽどすごいです。ヘリが来るまでしばし待ちます。
今日は2箇所からの出材で、いつもの職人さんが来れなくなったため両方を一人で見ないといけなかった中井さん。私が来るかもしれないと、あの大黒柱をなるべく後回しにしてくれてて、やっと来たのであとは任せたと、緊急事態に走っていったのです。任された西田さん、話を聞くとヘリコプター会社の人でした。東吉野に基地があるアカギヘリコプターさん。2年前に奈良で唯一のヘリ会社となってしまったそうです。少し前まで他にも2、3社あったのですが需要が減り撤退。吉野の林業に欠かせない出材手段がこの辺りでたった一社になってしまったのです。西田さんは東吉野の山守の家に育ちこの職に就いたまだ若い職人さんです。危険で大変な仕事だけど、絶対に頑張り続けてくださいね!!心の底からそう思ました。(つづく)
Morizo-内田

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by morizo-archi | 2016-09-07 08:00 | 「例えばこの木」 | Comments(0)

「例えばこの木」 02

[仕事の前に必要な体力]
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前日の夜、中井さんに「明日はヘリコプター来ますか?」とメールを。すぐに電話があって、天気次第で中止になるけど一応段取りしてます。と。
台風が近づてて明日を逃すと逆に後の日程が厳しくなる。いろんな手配もずれてしまう。きっと山仕事の段取りは判断に迷うこと、少なくないと思うのです。

きっと飛ぶ。もし飛んだら行かなかったことを後悔する。そんな気がして行ってみることにしました。AM5:47地下鉄に乗り、阿部野橋から大和上市に向かいます。この時間帯は特急も急行もなく初めての鈍行。知らなかった駅を眺めながら2時間揺られます。駅からタクシーで山の入り口まで20分。タクシーの運転手さんは不安そうに、「Uターンできますかね?」と繰り返します。8:10到着。前回のように1時間かけて登ったら見逃してしまうかもしれない。小走りに進みながら早速いろんな不安がよぎります。
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道、あってるかな?この橋、見覚えあるな。あれ?道はどこ?引き返したり、やっぱり進んでみたり。
おろおろしてると、「ル・・・・・」あっ、ヘリだ。
もう来てしまった。作業が始まってしまう。どうしよう。もう迷ってる時間はない。。。。
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焦ってしまって道を選ぶゆとりがなくなり、とにかくヘリコプターの音の方へ。道が無くてもウッドクライミング?登るしかない。記憶にある小河の曲がり角や鉄塔の足元を通らないまま不安いっぱい進み続けました。今までの山登りで一番しんどいかも。
 茂みの奥に一瞬、人の服が見えます。「内田さーん?」中井さんだ。間に合った!
でも足がヘロヘロで道なき道はなかなかすすめません。「ちょっとその辺で見といてやー」見たいけど、見えない。近づいては消えていくヘリコプターの音に興奮しながらも、吹き出す汗と焦りが増していきます。
今日は人手不足って言ってたけど、中井さん1人かな?どんなふうに出材するのかな?
心臓のバクバクがなかなか止まらず足も進まない。いつの間にか腕は傷だらけ。
少しずつ近づいて行ってみると、中井さんが初めて見る職人さんと一緒にいました。(つづく)
Morizo-内田



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by morizo-archi | 2016-09-06 08:00 | 「例えばこの木」 | Comments(0)

「例えばこの木」 01

[現場で見たので]
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来た。

ヘリコプターです。10年前、衝撃を受けた材木の運搬方法。「ヘリ出材」。実は、これを見てみたくて誰のつてもなく突然電話をしたのが小さなきっかけで、以来吉野に通うことになったのかもしれません。それが叶ってふとそんなことを思い出しました。

今回ご縁あって設計する家の大黒柱のヘリ出材に立ち会わせていただきました。1本の木が山に立ってる状態から、伐採、出材、製材、加工と、場所を変え、人を介して家の一部になる。まだ、山から出してもらっただけの状態なのですが、例えばこの1本の木を通して見えたこと、感じたこと、伝えたいことを、少し書いてみたいと思います。
でも、この大黒柱だけが特別なのではなく、ほんとはどの木も特別。どの木も大切な一本一本なのです。今回は、たまたまそれを伝えるきっかけとしてチャンスを頂いたような気持ちになってしまいました。もし読んで下さる方があれば、是非自分の家の木や机の木のことと思って頂けると幸いです。

これを書く意図は、私が本当に感激し感謝したいと思った気持ちを、家を建てる人も、建てない人にも伝えてみたい。知ってもらうことで少しでも山の大変な状況が変われば、、、、と思ったからです。そんな簡単な問題ではないのですが、もし何も変わらなくても、小さな小さなアクションとして発信してみたいと思います。へたな写真とつたない文ですがしばしお付き合いください。
Morizo-内田

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by morizo-archi | 2016-09-05 08:00 | 「例えばこの木」 | Comments(0)


建築設計室Morizo-の思いを発信します。


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